第2章 女王様と狂犬
「あっ、皆さん、ちょっと渡り廊下に来て下さい」
「イインチョー、おはよ」
「あ、おはようございます」
そうそう、そのせいで、委員長ってば俺しか挨拶してもらえなくて、精神的に辛そう。
ハチにも止めろって言うんだけどね、言うこと聞かないんだ。
ほら、今も委員長来たらそっぽ向くし。
お前は餓鬼か。
俺は、ため息をついてハチを蹴る。
すると、ハチは渋々「はよ」と挨拶した。
俺の手を煩わせないで、ゴリラの癖に。
「で、委員長。渡り廊下で何があんの?」
「そ、それが……、今の時期になって、急にクラス変えが発表されまして」
「「「えぇっ!?」」」
この学校に入学して、俺はまだ一年立ってない。
なのに、クラス変え!?
「一緒に寮の変わったとかで、大幅に変わる人も出てくるかと」
「うわぁ、まじかよ~」
「Aクラスと一緒になったら最悪だよな」
うちのクラス、Dクラスの天敵はAクラス。
元々成績優秀な生徒を集められたクラスなんだけど、まぁ本当に成績優秀なのか不思議なくらいだよね。
だって、中心に居るF6なんてほとんどぐーたらして遊び呆けてるせいで、後ろから数えたほうが早い連中だし。
「、行くぞ」
「しゃーないか」
そうして、クラス全員で渡り廊下へ移動してる途中。
目の前から歩いてくるのは……、よりによってF6!
しかも、あの喧嘩から数日しか立ってないから、赤パーカーの奴の傷なんて生々しいったらありゃしない。
――やば、まだ貸しだって残ってる。
「ハチ、待て」
俺は、今にでも飛びかかりそうなハチを抑えた。
「さっさ行って」
俺がそう言えば、赤パーカーのやつは勝ち誇ったような笑顔で、にんまりと笑う。
後ろに続く、紫、緑、桃色パーカーの奴らも同じように、勝ち誇った笑顔で俺らの前を通って行く。
その反応に、うちのゴリラ犬ハチが吠える吠える。
「ハチ、待て!!」
「んで、彼奴等が先なんだ!!」
「この前、反則技使ったでしょ。あれの貸し」
それだけ言えば、ハチは言葉をつまらせて大人しくなる。
そもそも、こちらが負けてた事実もハチは知ってるから、とやかく言えないんだろう。
ま、ハチ、落ち込んでたら身体で慰めるから、お前はさっさと俺に手ェ出せ。