第2章 愛しい人を脳裏に映しつつ……
「先生な、どうしてもホワイトドラゴンの鱗が欲しいんだ。討伐しなくてもいい、ドラゴンの鱗を引剥してこい」
「え、え、えぇぇぇ!?」
冗談じゃない!!
近づいただけで死ぬのに!!
「なぁに。トド松に言えば、ホワイトドラゴンの鱗くらい取ってきてくれるさ」
「そ、そんな無茶な……」
私の頭の中に広がるのは、絶望の二文字。
実の所、ここに居る間生活費はかからない上に、割のいいバイトが多くて、そのバイト代を全て実家に仕送りしてる。
なんせ、私の家は貧乏だから……。
そもそも、村自体が貧乏で貧困にあえぐ人が多いからね。
私は、村を背負って出てきたから、私一人の都合で学校を辞める訳にもいかない。
「大丈夫大丈夫、お前の頼みならなんでも聞いてくれるさ、アハハハハ!!」
先生は、愉快そうに笑いながら私の背中を叩く。
そして、半ば追い出されるように、職員室から押し出された。
これ以上、反論は許さないってことだろう。
よく笑う話しやすい人程、腹黒いってトッティ言ってたしね。
トド松「あれ? 先生、トトコに何言ったの!?」
トッティは、先生を睨みつけた。
すると、先生は肩を揺らして笑いながら「課題を出しただけだ」と一言言うと、部屋に戻ってしまう。
トド松「ねっ、課題ってそんなに難しい?」
恐る恐る聞くトッティに、私はゆっくり頷いた。
だって、ホワイトドラゴンの鱗だよ!?
トド松「ね、出来るだけ力になるから、教えてくれない?」
にこっと笑うトッティはやっぱ可愛い。
こんな可愛い子が男だなんて、今更実感できないなぁ。
男の人って思えないくらい、話しやすいや。
「それが、ホワイトドラゴンの鱗を取ってこいって……」
それを聞けば、トッティは難しそうな顔で唸る。
だって、そうだよねぇ。
この前ブラックドラゴンの角を買った時、お父さんから叱られたって愚痴ってたもん……。
あまりにも高い買い物らしいし、二度目はきついんじゃないかなぁ?