第1章 ◆*・1・*◆
あの日から
雅紀くんは私を色んな場所へ連れて行ってくれた
優しく笑顔の可愛い、この年上の男の人を
なんて呼べばいいかわからない私は
最初、「相葉さん」と呼んだ
緊張しながら、頑張って呼んだのに
「えー!マジなの、それ」って不満たっぷりの顔に可笑しくて2人で笑った
あれから、年上の可愛い人は「雅紀くん」で
だけど私に接する態度はやっぱり同年代の男の子とは違うスマートさがあった
雅紀くんと会わない日の私の現実
働き始めた、本屋のバイトは順調で先輩にも店長もいい人だった
仕事も楽しかった
私の人生で1番穏やかな時期だったのかもしれない
「ただいま……」
出て行った時と変わらない部屋
違うのは
智が眠っていること
起こさないようにキッチンに行って
お土産に買った、たいやきを冷蔵庫に入れた
キッチンの小さな光で見える智の頭
私の想いは
ここにしかないんだよ……智
小さな溜息と冷えた空気
この小さな幸せは
いつまで続くんだろう……
「……・・・・」
智が呼んだような気がして
眠るそばまで行った