第36章 君がくれる口づけは《カラ松END》
カラ松「さくらは、誰が好きなんだ? なあ?」
「……」
言えない。そんなの、答えられない。
だって、わたしだって、自分で誰が好きかなんて分からないんだから。
カラ松「おそ松? チョロ松? 一松? 十四松? トド松? なあ、誰なんだ?」
「わ、わかんないよ……そんなのっ」
わたしは、泣きながら、やっとの思いで言った。
「誰が好きかなんて、わかんない! わたしは、カラ松くんが好きだったはずなのに……でも、わたしの好きだったカラ松くんは、幻影で……わたし……わたしは……っ」
自分でも、何を言っているのか、何を言いたいのか、わからなかった。
でも、止めることはできなかった。次々と溢れてくる言葉を、そのままカラ松くんにぶつける。
「……もうわかんないの! 本当は、あのまま……カラ松くんを好きなままでいたかった! カラ松くんと幸せになりたかった! でも、もう無理でしょう…? カラ松くんは……もうわたしの好きなカラ松くんじゃない!」
はっとして、我に返る。
カラ松くんを見ると、彼は、笑顔を消し、おそろしく冷たい瞳でわたしを見ていた。
カラ松「……ふうん?」
カラ松くんは、わたしを見下ろし、冷たい声で言う。まるで、他人事みたいに。
カラ松「さくらの気持ちは、よーく分かったよ。さくらがそう言うなら、さくらの望む未来を見せてやるよ」
「わたしの……望む未来?」
カラ松「このまま終わるなんて嫌なんだろ? やっぱり、物語はハッピーエンドじゃなくちゃな」
そう言って、カラ松くんは、唇だけで笑みをつくった。
その笑顔は、
あまりにも不気味で、怖くて、冷たくて……
わたしは、言葉を発することができなかった。
カラ松くんは、わたしの服をととのえると、そのまま部屋を出て行った。
ひとこと、「いい子で待ってるんだぞ」という言葉を残して。