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僕の大型鰐

第1章 出会い


青年は立ち上がり、まっすぐにこちらへ向かって来た"アラバスタの守り神"に一礼して微笑みかけた。

「初めましてサー・クロコダイル。お会いできて光栄だ」
見た目の割に低く、落ち着いた声で青年が話し掛ける。クロコダイルはといえば、口に咥えた葉巻を噛み千切りそうだった。それほど機嫌が悪かった。青年はにこやかに続ける。
「そう怒んないで…稼ぎはいらない。全部返すよ」
「なんだと?」
先程とはうって変わって軽い口調になった青年は、積み重なった掛け金の山をディーラーに押しやってクロコダイルに歩み寄った。

「代わりと言っちゃあなんだけど、クロコダイルとゆっくり話しがしたいな。」
下から舐めるように見上げてきた青年に対してクロコダイルの額にはぶっとい血管が浮いた。だが、彼がふざけるなと怒鳴るために息を吸い込もうとした直前。
「…だめ?」
子供の甘えるような口調だったが、青年はその言葉と共に覇王色の覇気をクロコダイルに浴びせた。
「……ッ!」
機嫌の悪さのせいで、完全にではないがいくらか油断していたクロコダイルは思わず目を見開く。気を抜けば膝から崩れ落ちそうだった。ビリビリと緊張が体を走った。
「……いいだろう、ついてこい」
気を取り直したクロコダイルが低い声で短くそう告げて身を翻すと、青年は満足そうにその後をついて行った。
彼らが店の奥へと移動してから、事情を知らないカジノにいた客の頭の中にはクロコダイルが"子供に甘えられると弱い男"としてインプットされた。
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