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僕の大型鰐

第4章 報告


「…あんな衝撃的な出逢いをしておいて、忘れろなんて方が無理よ」
「へへ、そう?」
シャルラと初めて会った時の事を思い出し、ロビンは柔らかく笑う。てっきり忘れられていると思っていたシャルラは嬉しそうにはにかんだ。
美男美女が揃って楽しそうに笑う姿は本当に綺麗で、通りすがりの従業員たちは仕事を忘れ、足を止めて見惚れてしまう。ふとそれに気付いたロビンは資料を脇に挟んで両手を叩いた。
「何をぼーっとしてるの。さっさと自分の仕事に戻りなさい」
女性にしては凄みのある低い声。従業員たちは慌ててその場から離れた。
「ヒューゥ。まるでお局サマだね」
シャルラはケラケラと笑って茶化すとロビンは返事の代わりに苦笑した。

「…シャルはどうしてここへ?」
「ん?ああ、ちょっと待って」
シャルラは見聞色の覇気を使ってカジノ内を調べたが、自分たちの声を聞き取れる距離に人はいなかったし、盗聴電伝虫も仕掛けられていなかった。それでも念のため声をひそめ、ロビンの耳元に口を近付けた。
「実は俺、お宅のボスとお付き合いさせて貰うことになってさ」
「あら、サーと?」
「ああ。お仕事の邪魔する気はないけど、報告はしといた方がいいかなって」
「素敵じゃない」
「そう言ってくれる?」
「どういう経緯でそうなったのかは知らないけれど」
ロビンは大して驚いていなかった。海王類と意志疎通出来るような男だから、何ができてもおかしくはないと思っていたからだ。ついでに言うと自分が少女の時に「青年」だった彼が、自分が大人になった時に「青年」の姿のまま現れてもさして疑問に思わなかった。シャルラは「そういうもの」だと勝手に脳が認識していたのだ。
「経緯も何も無いけどね。ちょこーっとバロワの事で脅したら、すぐ了承してくれたの」
「バロワ?」
「バロックワークス。」
ロビンは笑いながらなるほど、と頷いた。あの堅物がどう言いくるめられたのかは気になっていた。それと同時に一抹の不安も感じる。
「あなたの事だから不可能はないんでしょうけど」
「褒めたって何も出ないよ?」
「一応聞かせて頂戴。なぜわが社の存在を知っているのか」
ロビンの真剣な表情にデジャヴを感じてシャルラは思わず笑いそうだった。こういう所は似た者同士なのだろうと、クロコダイルの姿を思い浮かべる。
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