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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


二人が来た翌日のこと

「お止まりください」「これ以上は…!」そんな女中の声が聞こえてくると、信玄は褥に寝たまま読んでいた本を横に置いた
そして、腹の上の子を落とさないように支えながら廊下の方を向く

「入るぞ」
「あ…?」

シュッと、襖が開けば

「湖、今日の馬指南は俺がしよう」

光秀だ

「…う、ん…」

湖は、信玄にまだ乗っかったままの姿だ

「明智 光秀…お前は礼儀を知らないらしいな…」
「開ける前に声はかけたはずだ」
「…許可してないがな」

寝ぼけた湖をよそに、大人二人はその視線のやりとりだけで周りの肝を冷やす
止めるように光秀の行く手を阻んでいた兼続と女中達
女中は真っ青になって、それに気づいた兼続によって下げられる

「申し訳ありませぬ」

誤ってきたのは、止めきれなかった兼続だ
信玄は、ため息を零すと湖の背中を支えた状態で起き上がる
そして、湖の背をぽんぽんと叩き起きるのを促すのだ

「湖、湖。起きろ、朝だぞ」
「ととさま…あとちょっと…」

だが、肝心の湖はまだ眠いとばかりに信玄にすり寄っている

「光秀、いくらなんでも寝所は…っなんっ・・」

光秀を追いかけてきた秀吉は、褥に座った状態の信玄と、信玄に抱えられている湖を見て固まる

「…っ、武田信玄っ!貴様、女ったらしだと知っては居たが…幼女にまで手をつけるとは…けしからん男だ」

ふるふると拳を握り睨む秀吉に、信玄は「ふざけたことを言うな」と一瞥した

「お前達、広間で待て。湖を起こして連れて行く」
「信用できるか?!さっさと湖を離せっ!!」

秀吉のばかでかい声が部屋に向けられれば、湖は驚きで目を覚ますと直ぐに…

「ひ、びっ…ふえぇ…っ!」

と泣き始めるのだ
「しまった」と口をふさぐも時すでに遅し
訳も解らず泣き始めた幼子は、泣き止むまでに時間がかかるのだ

「…広間へ行ってろ」

部屋の前にいた三人は、信玄の冷たい視線を受けることとなった

「わ、悪かった…」

秀吉は罰悪そうに

「そうしよう」

光秀はのうのうと

「もっ…、申し訳ありませぬっ…」

兼続は頭も腰も低くし、部屋から立ち去った
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