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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


髪飾りより薄い桜色の着物には花びらの模様が施され、それに合わせた袴は柔らかな黄色びた緑色だった
さっそく着せてもらえば、それは跳んだり跳ねたりしやすい着物で湖は、すっかり袴が気に入ってしまう

「これ、いい!すごくうごきやすい」
「気に入られましたか?」
「うんっ、みつなりさま。つれてきてくれて、ありがとう!」
「喜んで頂けて嬉しいです。では、そちらのお着物以外にも、あと…そうですね…」

結局、紫、紺の袴を二点
濃い桃色と、白緑色の着物を二点
選んだそれらを城へ届けてもらうように頼み呉服屋を後にした

湖は、袴が余程気に入ったのか先ほどから、ぴょんぴょんと飛び跳ねて歩く
三成はそんな湖の様子をくすくすと笑ってみていた

「うん。やっぱり、うごきやすい!湖ね、いーなーっておもってたの。みんなのおきもの、こーゆーので、おうまさんのりやすそうって!」
「湖様は、馬がお好きですね」
「うん!だいすき!きもちいいの、びゅーんって…かぜになったみたいで」

手を繋いだ幼い湖は、三成を見上げたにこにこと話をする
越後に来て半月ばかり、この幼い湖と過ごしている間、何度春日山城から攫って行こうという考えがよぎったか
その度に、頭をよぎるのは大人の湖の笑顔だ
「三成くん」と優しく自分を呼び、柔らかい笑みを向ける湖
その湖と、今の幼い湖は、同じ人物だ
湖らしい…と感じる所もたくさんあるが、幼少期はかなりおてんばに動く方だったのかと気づかされることも多くある
どう成長して大人になっていくのか、ずっと見ていたい
そう思うたびに、頭をよぎるのはどう安土に連れて帰るかということだ

(でも…湖様の時間は越後で根付いてしまった。此処には、今の湖様にとっての両親が居て、兄がいる。そして三歳という幼い自分を知っている謙信や、幸村、兼続…女中や家臣も湖様の存在を受け入れている…)

連れ帰ることは不可能だ

そう自問自答を繰り返しているのだ

「ね、みつなりさま!きょうは、これからおうまさんできる?」
「…ええ。出来ますよ」

「うれしいなー」と小さく歌い出す幼子
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