第25章 桜の咲く頃 二幕(六歳)
佐助の部屋に戻ってきた二匹
その姿をみてほっとした佐助は、先ほど同様書き物の途中だった
シュ…と、音を立てると白粉は猫から人へ姿を変え、
後ろから覗き見るようにその手元を見た
「なんだ?さっきから進んでないな…何を考えているのか気になっていたんだが…」
佐助の手元の設計図
なにやら武器のようではあるが
出かける前にちらりと見た状態から、さほど進んでいないのだ
「二人が気になって考えが進みませんでしたよ。何をしに行ってきたんですか?」
煤猫が佐助の膝に乗り、紙をみようと机に手を伸ばす
手は届くが…この頭の位置では一体何が書かれているのかまったく見えない
「信玄に「おまもり」をな」
「…そうだとは思いましたが…二人で城を出て行くのは止めてください。心配になりま…っ」
膝の重みがかわる
温もりも
「さすけにーさま、これ。なぁに?」
白粉から視線を外し、自分の膝の方を見れば
真っ裸の湖が膝に座って机に乗っている図面を眺めているのだ
「湖っさん…!」
「ん?なぁに?」
佐助の驚きの声に、なんだろうと兄の方を振り向く湖
肩から滑り落ちる一本一本の髪の毛がきらめいて見える
(六歳に見えないし…さすがにもう裸で堂々としていい歳じゃ無い!!目に毒だ…)
「湖、裸だぞ。また忘れてるだろ?」
そんな湖に、白粉が声をかける
「ううん。わかってるよー。だって、みえなかったっだもん」
佐助は無言で、届く範囲に置いてあった自分の羽織で湖を包むと
そのまま持ち上げ歩き出す
「え、にーさま。からだ、いたいのは??」
「それより、こっちの方が重要。はやく着替えなさい」
珍しく命令形の佐助、その表情はまったく変らず…読めない
(なるほど…こうやって表情を隠していたわけだ…)
白粉はその様子を面白そうに見ていた
佐助の内心は、慌てているのだ
いくら現在、妹としている湖だからって…幼子だからって…
(そうそう何度も裸を見られて気持ちの良い記憶ではない…むしろ恥ずかしさで、元に戻った湖さんにどう思われるのか…ぜったい良くない…)
「早々に状況を改善しなくては…」