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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


「いや…珍しく、越後の露天で金平糖を見かけたから引き返して…御館様?」

幸村以外は居ない廊下を見回す信玄に、幸村は眉を動かす

「湖を連れてきてはいないよな…」

確認のように出た信玄の言葉

「こんな所に、ちびすけを連れてくるわけなぇだろ」

幸村は、「はぁ?」と呆れたように答え部屋に入った
信玄もまた部屋に入り、どかりとあぐらをかく
その様子が先ほどとは変って見え、幸村は信玄に聞いた

「…具合は…」
「悪くない。体の調子は全く問題ない」

いつもなら、誤魔化すように話を変える信玄
だが、このときは幸村が聞き終えるより早く答えを返したのだ
そして、その顔色も悪くない
調子が悪くないのは、事実なのだろう

「じゃあ、何のために此処に来たんです?」
「…そうだな…幸、お前なにか匂うか?」
「は?…匂うも何も、此処は化粧と酒の匂いで溢れてて…宿に入った時点で鼻が効かなくなりますよ」
「…そうか」

確認はしたが、今は信玄も感じない湖の香り

(だが…確かに感じたはずだ…)

「帰るぞ」
「え…?」

(湖に…聞くしかないか…だが、どう聞く…?)

少し前から勘付いてはいた
何故か湖と一緒にいると収まる痛み

(だが…どうしてだ?)

湖が何かしているのか?
解らないが、体の調子が良い理由だけは信玄の中で確定していた

(湖だ。あの娘に違いない)

金平糖を受けとりもせず、入ったばかりの部屋を直ぐに出るという信玄
幸村は首を傾げながらも、彼について歩いて行く
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