• テキストサイズ

【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


鈴の体から湖の体に戻ってしまったのだ
大きさが変れば、当然その場で体が膨らみ、信玄の拘束から出ることは叶う
だが…
信玄は湖を抱えるような格好になっていた
着物は乱れ、下ろされていた手は湖の背中に乗っている
素肌に触れる暖かな体温
それにぴくりと身を揺らすも、口を押さえ声は出さずに信玄の様子を伺う

(寝てるよね…?)

覗き見た信玄の目はまだ開きそうもない
重たい手を両腕で避け、どうにかそこから出た湖
信玄の着物をなんとなく直し、息を吐いた
そして、再びその顔を見る
落ち着いた表情で寝息をたてている信玄
ほっとし、大好きなととさまの額に口づけを落とすと

「湖…」

信玄の声がし、びくりとその身を離した

「…っ、ととさま」

だが、信玄はまだ寝ているようだ

(ねごと…かな?)

ちょうど上から白粉の声が聞こえ、湖はすぐに鈴の体に変化すると、入ってきた窓から部屋を出て行く

(きてよかった。やっぱりととさまのあれは、まいにちみとかなきゃ…でもあと一かいだけ…)

屋根まで上がれば、白粉が心配そうに待っていた
駆け寄ってその体にすり寄ると、二匹はすこし会話をし城へと戻っていった




「ん…?」

鼻をくすぐったのは、甘い花の香り

(湖の香りか…)

だが、此処は女郎宿
湖が来るはずも、知るはずも無い場所だ

(夢でも見たのか…)

手を持ち上げ、その手の平を見つめる信玄

(感触まで…ずいぶんと現実浸夢だな)

苦笑する自分にふと気づき、胸に手を当てる
眠る前まで、痛んでいた部分に痛みがない
体を持ち上げ、軽く動かすが…

「なんだ…」

明らかにおかしい
痛みを感じない
それどころか、体が軽いようにすら思えた
窓の木戸を開け、外を見るが時間の経過はさほどたっていない

そして、やはり部屋からわずかに感じられる湖の香り

「…夢じゃ無い…のか?」

ここを知るはずも、来れるはずもない少女の事をどうしても思ってしまう信玄はすぐに立ち上がって部屋を出た

「わっ…」

襖を開けると、目の前には驚いた表情の幸村がいる
どうやら、襖を引くタイミングが同時だったようだ

「信玄様…、どうかしたんですか…?」
「幸…、お前どうして…」
/ 1197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp