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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


信玄が眠りについた後、白粉と湖はその部屋のちょうど上にたどり着いていた

『この真下の部屋だ』
にゃぁ
『…解った。では、ここで待つ。何か、あれば直ぐに知らせろ』

白粉は屋根の上に腰を下ろした
湖はその体にすり寄って鳴くと、屋根から部屋の窓部分に降りるのだ
少しだけ開いている木戸に体をねじ込み、中に押し入れば
そこに見えたのは、仰向けに寝転ぶ信玄の姿

(ととさま…)

そして、その信玄の胸のあたりにある靄
煤色だった靄が、濃い黒みを帯びていた

(…やっぱり…)

鈴の姿のまま信玄の近くに寄っていく湖
具合が悪いのか、信玄はその気配に気づかず動かない

(ととさま、まってって。すぐになおしてあげるね)

ゆっくりと、気づかれないように信玄の体に乗って着物の袷からその中に入る湖
爪を立てないように黒い靄部分まで進めば、いつもより少し早めの心音が聞こえた
靄が出ている胸下に湿った鼻先をくっつけ口づけする
すると、靄の色が元の煤色に変っていくのだ

(…いろが、かわった)

先ほどまで早かった心音が、いつもと同様のリズムに変わり、荒かった息も収まっているようだ
湖は、ほっと息を吐いてその懐から出ようとした
だが、急に体制が変わり、信玄が横向きになったことで懐から出られなくなってしまう

(っ?!)

慌ててもぞもぞ動くが、あまり動きすぎで信玄が起きてしまえば不審に思われる
幼い湖でも、そう考え一度ぴたりと体を止めると…

(おちつこう…えっと、ととさまの手できものの入り口がふさがってるんだよね…)

体の上側にある横に着くように降りていることで、湖はちょうど閉じ込められている状態だ

(鈴のからだでも、すきまがなければでられない…すこしまったら、またごろんしてくれるかな…)

ほんとうにすこしだけ待ってみるが、そんな簡単に体制は変らない

(じゃあ…)

湖は出ることだけ考えて、起きるかもなんてことは後回しで行動してしまう
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