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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


その頃、信玄と幸村は…

「御館様、本当に此処に泊まるつもりですか…」
「なんだ?幸、寂しいか?」
「っ。そーじゃねー…ただ…なんで急に…」

幸村は体調の事を口に出しはしないものの、言いたいことは信玄にもよく解った
だが

「何を心配しているんだ。たまには、美女の酒でおぼれたくもなるさ」

信玄は、それを認めない
いつものように、のんべんたらりんとした態度を見せるのだ

「…解りました。明日、昼に一度此処に来ます」

幸村は、信玄の様子を見るとため息を零し部屋を出た
部屋を出れば、賑やかな音が近くから聞こえる
此処は、いわゆる女郎宿だ
信玄の隠宿にもなっている
三ツ者と対面で連絡を取り合う場合などに使用している部屋だ
女将も事情を知っている者
もちろん三ツ者も数名、この宿に存在している

(…今、織田とは同盟中。周辺に変な動きはない…万一何かあってもあそこには三ツ者も居る…一晩くらいなら大丈夫だろうが…)

「あの人が大丈夫でも、ちびすけは騒ぐだろうな…」

肩を落とす幸村は、湖の泣き出す様を思い浮かべた

(毎夜毎夜、湖なり鈴なり…気づけばあの人の布団に入り込んでる…不在を隠すことは無理だろうな…)

そう、無理どころかすでに白粉によって知らされているのだ
そんなこととは知らず、幸村はため息をつきながら城へと戻るのだった



「はぁ…」

そして、こちらも同じくため息を零していた

(たく…この体は…)

具合が良いかと思えば、急に突き刺さるように痛みが始まる
自身の体だと言うのに言うことを聞かない

(怠いな…湖には悪いが、今日はここで休ませてもらうしか無いだろう…)

誤魔化すことは出来る
が、今、城には石田三成が居るのだ
夜間は兼続の御殿へ行っているとはいえ

(あの男、些細なことでも見落とさない…一番気をつけなきゃいけない奴だな…)

「…明日、湖には何か土産を…」

ぐっ、ごほごほ…

部屋には、信玄の咳払いが聞こえる
だが、それは周囲の賑やかな声で打ち消され外まで聞こえずに済む

「くそ…歯がゆいな…」

畳の上に寝転んだ信玄は、そのまま目を閉じた
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