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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


ただし、そんな表情はつかの間だ
理解すると、なにやら思案するように眉を潜める

「一応言っておくが、野暮な事は止めとけよー。俺たちじゃ、どうにもならんだろう」
「俺がそんなまねをするものか…お前ではあるまいし」
「じゃあ、何を小難しい顔をする必要がある?」
「……織田信長…あれも、猫を気に入っているだろう…面倒だ」
「あぁ…なるほどな…こっちに、あいつの欲しいものが二つもあるって事か」

織田から来た書状だ
あれにはっきり書いてあったのだ
・白粉を信長に預けること
まさか信長と兼続と、複数もの人間が白粉に執着するとは思っていなかった

「何を気に入ったのかは知らんが、越後の地に居る者を易々渡すわけにはいかん」
(しかし兼続か…あの男がな)

「さすがは謙信様、部下思いです」

ぱちぱちと手を打ちながら天井から降りてきたのは佐助だ

「佐助…どこから聞いてた?」
「天井から…と言いたいですが、そう言う意味ではないですね。兼続さんと信長様が白粉さんを気に入っている…ってあたりからです。ちなみに、湖さんから信玄様の娘になるって宣言はされてます…さっきの雰囲気からするに、本気のお話のようですね」

謙信に着物を手渡しながら、信玄に答えた佐助

「ずいぶんと早いな」
「段蔵(だんぞう)が側まで来てました。追い返しましたけど。一応」

加藤段蔵は、謙信の軒猿の1人だ
変装の名人で、隠密行動もずば抜けている

「一応?」
「面白がっていたので付いてくる可能性もあるかと」
「…呼べ。直々に追い返してやる」
「謙信様。段蔵を呼び出したところで出てきた試しはないですよ」

手渡されたのは確かに謙信の着物だ
いつ城に話が伝わり、着物を持ってきたのか
その行動が早すぎる
まるで付いてきて覗き見ていたから予測して行動したかのように早いのだ

「…ならお前が始末しろ」
「段蔵さんの相手は身体が完全に戻らないと無理です。戻ったところで、直接の勝負では難しいですね」

「ならば、鍛えてやる」と謙信が言いだしたところで、此処から離れる事も無いのだろう
今は湖の側に居るのだから

(佐助には話しているのか。なら、白粉にも話したのか…?あの日から特に話が無いから、まだしていないのだろうと思っていたが…湖に聞いてみるか…)

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