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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


少し小さな馬の馬上にいる湖を白粉が見上げている

「湖、一人で行動するなよ」

湖の手を軽く握った白粉を見下ろせば、心配そうな色がその目に見えた

「わかってる。かかさま」
「…やはり私も」
「大丈夫。かかさま、馬嫌いでしょ?それに、行く場所も大きな水たまりだよ」

クスクスと軽く笑うと背を屈め白粉と頬をすりあわせるようにするのだ
それはまるで猫の動作そのもので

「…白粉にならばいいが、あれはいずれ止めさせないとな」

と信玄が苦笑しながら小さく言った
誰もが身に覚えがある湖の動作だ
幸村でさえも覚えがある

「あー。ちびすけの時はなんとも思わなかったけどな…」
「記憶が追加されれば無いと思うけど…癖になってなきゃ…」

佐助は憶測で話しながらも、気がかりなことを口にする

「…放っておけ」

謙信は、湖と白粉のその動作については放置するようだ

「湖、行くぞ」
「はい。謙信さま。じゃあ、かかさま…」
「あぁ…湖を頼んだ」

謙信と信玄にそう言うと白粉は湖から一歩離れる

「湖、忘れるな。何かあれば、笛を吹け」
「…心配性だね、かかさま」

次こそは行ってくると、馬を歩かせ始めた謙信達の後を追いだした湖
朝餉を食べたあと、謙信、信玄、幸村、佐助と湖はそれぞれの馬に乗って春日山城を出た
目的地は、春日山城から望める海
謙信との約束をしていた場所だった

先頭を行く謙信を前に、佐助と横に並んで馬を駆けさせる湖
その後ろに、信玄と幸村がいる

「湖さん、大丈夫そう?」
「へーき。それより、もっと早く駆けたいって、この子が言ってる」

クスクスと、栗色の馬の鬣を撫でる湖はそれは楽しそうに言うのだ

「馬がじゃ無くて、お前がだろ」
「そんなことないもん。違わないけど、風花(ふうか)もそう言ってるもん」
「ん?名前をつけたのか?」

幸村と信玄の方を軽く振り向きながら「うん」と笑う少女は「ちょっと時間かかっちゃったけど、一生懸命考えたの。かわいいでしょ?風の花って書くの」と言うのだ

「悪くない…良い名だ」
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