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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


(人間らしくなった)

その場にいた彼らはそう思う

「確かに…じゃあ、謙信さまとととさま達と行ってきて良い?」
「あぁ。構わない。ただし、何かあれば必ず笛を吹け」
「……少し遠いみたいよ。かかさま、聞こえるの」
「私を誰だと思っている?常にその方向に気を止めていれば聞こえないことはないだろう」

頬から手を離すと、ぽんぽんと頭を撫でた白粉は自分の食事に向き合った

「ちゃんと食事してよ、かかさま」
「わかってる」
「わかってなさそー…兼続、かかさまの事よろしくね」
「承知しておりまする。それに、この度は日帰り。朝出られても、夕方には戻られる予定でございます。湖様も安心して楽しんで入らしてください」

「うん」とご機嫌な笑みを浮かべた湖は食事を食べる
湖の食事は、皆と同じものだ
量は少し少ないものの、以前のような小皿がたくさん乗ったお膳ではない

「うん。湖さん、ちゃんと食べられるようになったね」
「私、十二歳のほとんどが食事と睡眠だよ。胃も大きくなって食べられるようになりますよー兄さま」
「うんうん。良いことだ」
「良くないよー。家康さまから貰った書留帳もほとんど進まなかったし、私、戦のお勉強もほどんどしてないんだよ」

ぷくっと頬を膨らましながら食事を取る湖は、やはり少女だ

「あ。ととさま、食事終わったら髪の毛切ってくれる?」
「髪?なんだ?」

湖の髪は今、腰程の長さで切りそろえられていた
長い髪はハーフアップにされ、桃色の飾り紐で括られている

「お風呂、髪洗うの大変なの。だからね、肩下くらいまで切りたい」
「き、切ってしまわられるのですかっ?!」

ぎょっとしたのは兼続だ

「だって。あと五日で十五になるんだよ。また伸びるよ、髪は」
「確かに、さようでございますが…」

結局は湖の意向で切り肩下でそろえられた髪の毛
翌朝は、良く晴れ雲一つ無い晴天だった
季節は夏だ
湖が戦国時代に来てからすでに一年過ぎてしまっていた
緑が濃くなり、風が暖かさを運ぶ
気候は落ち着き突然の雨に降られることもない季節になったのだ

「行ってくる」
「っは。それでは、謙信様、信玄様、幸村殿、佐助殿。お気をつけて」
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