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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第35章 過去編:名前のない怪物


「俺達は最初に発見された橋田を第一の被害者だと思ってるが、果たしてそうだろうか?」

慎也の一言に、泉と青柳はハッと顔を見合わせた。

「志恩!」

不躾な侵入者が声を上げる。
六合塚がソファーに身を横たえたままで目を開けると、そこには珍しく取り乱した泉を筆頭に見慣れた姿が立っていた。

「何?泉、どうしたの?アンタが取り乱すなんて珍しくない?慎也くんと喧嘩でもした?」
「喧嘩したら今一緒にいるわけないだろう。」

真面目に慎也に切り返され、志恩は両手を上げた。

「はい、ごめん。で?なあに?」
「志恩!被害者少女の顔写真と一致する画像データを探し出して欲しいの!」
「何よ。それなら無いって言ったでしょ?ここ最近の閲覧可能な画像データに、彼女と同一のものは無いって。」

志恩の言葉を、慎也が遮る。

「ここ最近じゃない。」
「は?」
「遡れる限り、全ての過去画像データを検証して欲しいんだ。」
「遡れる限りって、慎也くんそれ本気?」
「あぁ。少女の殺害が、橋田殺害より過去に行われた可能性がある。」

その言葉に、志恩の表情が変わった。

「確かに――!ヤダ、なんで気付かなかったのかしら!犯人は死体防腐処置のエキスパートだって言うのに!」
「どんなに些細な情報でも良いのよ。頼むわ、志恩。」

泉の言葉に志恩は頷くと、巨大モニターに向き合った。

「遡れる限りの全ての過去画像データね。いいわ。うちのコンピュータ達にシステムダウンする勢いで頑張って貰う!その代わり、泉と慎也くん!」
「なんだ?」
「なんかあったら、ちゃんとケツ持ってね!」
「心配するな。」

皆が見守る中、画像の検索が進んで行く。

「あった!」

志恩が声を上げると、その場にいた全員が一斉にモニター前に群がる。

「十年前の官報ね。『扇島廃棄区画で無戸籍児童保護』――。この写真の男の子の顔が、彼女とほぼ一致してる!彼の名前は――。」
「藤間、幸三郎。」

志恩が答えるより早く、泉と青柳が呟いた。
異様な静けさが、分析室を襲った。
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