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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第35章 過去編:名前のない怪物


その言葉に佐々山が再び憤慨しそうになるが、慎也はそれを押し留めて退出した。
刑事部屋は嵐が去ったように静かになった。

「――は?」

青柳と桜霜学園から戻って来た泉は、機嫌が最悪な霜村に先程の一件を聞かされ目を丸くしていた。

「狡噛監視官と佐々山執行官が、ですか?」
「そうだ。君だけ藤間の捜査に組み込むなと言って来たんだが?」
「――申し訳ございません。彼らの不用意な発言について、謝罪申し上げます。」

泉はすぐに霜村に向かって頭を下げた。
それを見ていた二係の刑事達は、彼女の方が精神的に大人なのだと悟る。

「それともう一つ。青柳にはこの件は部外秘だと伝えるように言っておいたはずだが?」

チラリと横目で見た霜村に、青柳は肩を竦める。
要は泉が余計な事を喋ったのだと言及したいのだろう。

「私の失言であった事は認めます。ですが、一係が今行っている無戸籍者の特定と藤間の件が繋がって来たので情報開示が必要だと判断しました。」

泉がハッキリとそう言えば、霜村の眉根が寄る。

「ほう?――その旨の報告はまだ受けていないが?」
「不確定要素が多かったのでまだ報告しておりません。」
「至急、報告書の提出を。」
「――かしこまりました。」

泉は内心面倒臭いと思いながらも、大人しく頭を下げた。
青柳を伴って休憩室へと行けば、泉は盛大に項垂れた。

「お疲れ様。流石ね、日向監視官?」
「冗談じゃないわ!なんであの人、あんなに陰険なの?良いじゃない、仲間内に情報開示するぐらい!」
「そこじゃないわよ。多分、狡噛くんと佐々山くんに言われたのが悔しかったんでしょ?」

青柳がコーヒーを渡してやれば、泉はそれに口を付ける。

「それにしても。愛されてるわね、アンタ。」
「はぁ?あぁ、慎也と佐々山くん?――まぁね。」

どこか投げやりな泉の様子に、青柳は苦笑する。
丁度その時、慎也と佐々山が必死な形相で走って来る。

「ん?あ、おい!狡噛、待て待て!日向チャン、いた!」
「泉!丁度、良かった!」
「は?何事?」

大の男が二人して走って来るので、泉は思わず引き気味になる。
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