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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第35章 過去編:名前のない怪物


「俺達も藤間の捜査に加えろって言ってんだろ!」

霜村監視官のデスクに手をつき、佐々山が声を上げた。佐々山の怒号に、二係の刑事部屋が張り詰める。

「――貴様、口の利き方に気を付けろよ。」
「あんたが何度言っても聞かねーからだろーがぃ。使い慣れてねぇ敬語のせいで顎が疲れたわ!」

二係の刑事達は霜村と佐々山の間に飛び散る火の粉が自分に降り掛からぬよう、仕事に没頭する風を装っている。

「それはこっちの台詞だ。どこから藤間の話を聞きつけた?――日向監視官か。」

佐々山の後ろで黙って立っている慎也を見れば、霜村は挑戦的に言った。
ここに頼みの綱の泉の姿は無い。

「二係のヤマだって言う言い訳は聞かねーぜ?だったらなんで日向チャン使ってんだよって話だろぉ?」
「執行官である君には関係の無い話だと思うが?」
「はぁ?ウチの飼い主サマ、勝手に持ってくなっつってんだよ!連れてくなら俺らも一緒にしろ。」
「――佐々山、お前ちょっと黙れ。」

慎也に促され、佐々山は不服そうに身を引いた。

「狡噛監視官、君が付いていながらなんだねこの有様は。」

霜村のややうわずりかけた声色に、二係の刑事達の間に緊張が走る。今ここで霜村の機嫌を損ねれば(もう十分損なってはいたが)そのあおりをくらうのは他でもない、自分達なのである。二係の誰もが祈るような気持ちで、慎也の冷静な対処を期待した。

「失礼はお詫びします。ですが佐々山の言う通り、日向監視官だけを危険な捜査に組み込むのは辞めて頂きたい。」

そうじゃないんだよ!と、二係の刑事達は内心で叫ぶ。今慎也に求められたのは、迅速な謝罪と退出である。それを何故、批判の言葉を紡ぐのか。

「危険な捜査?狡噛監視官。何を勘違いしているのか知らないが、日向監視官に危険な捜査などさせてはいない。彼女には青柳監視官と共に、桜霜学園と公安局の橋渡しをして貰っているだけだ。知っての通り、あそこは伝統だなんだとうるさいからね。そこに日向監視官は適任だった。それだけだ。」

ジロリと睨まれるように言われ、慎也は眉根を寄せる。

「――失礼しました。行くぞ、佐々山。」
「狡噛監視官。大事な恋人が心配なのは分かるが、まずは与えられた領分を果たしたまえ。」
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