第2章 レッツゴーKY
プルルルル…
「もしもし。」
清掃会社のバイトに向かう途中、胸ポケットに入れてあった携帯が鳴った。
折りたたみ携帯のサブディスプレイに表示された会社を確認して電話に出ると、掛けてきたのは佐渡だった。
「佐渡さん、どうしましたか?」
『またぁ、電話位まーちゃんて呼べば良いのに~』
「大した用事じゃないなら切りますよ。」
『あ~ダメダメ、私が悪かったからちゃんと聞いて』
こういう時のはるが本気で切る事を知っている佐渡は慌てて説明を始める。
『もう現場に向かってるかい?』
「もう目の前ですよ。会社の駐車場に入る手前で道が混んでて電話出れました。」
『って、社用車運転してるの?吉田さん乗ってないのに出発したのかい?』
「えぇ。二人で遅刻するよりどっちかでも到着してた方が良いと思って…で、吉田さん来ました?」
『相変わらずシビアだね』
「仕事に惰性や馴れ合いは要りませんよ。で、私はどうしたら良いんですか?車が動き始めたんで早くして下さい。」
『あぁ、吉田さんインフルエンザで今日から一週間休むそうだ。ただ、時期が時期なだけに他の現場担当も休んでる人が多いみたいで、はるの現場に応援をやることが難しいんだが…』
「大丈夫ですよ」
佐渡が、大丈夫かい?と聞く前にハッキリ答える。
「ただでさえ空きフロアのある会社ですし、今週は他のバイトに午前中は入ってないんで、無理な時は現場の日数増やして対応します」
『そうしてくれると助かる。ただ…』
「無理はしませんから。安心して所長業務頑張って下さい。」
『あっ…』
ピッ…
佐渡の返事を聞く前に電話の通話終了ボタンを押す。
社用車を駐車場に停めて、少しだけシミュレーション。
この会社を決められた時間内にどう完璧に仕事をこなすか…。