第20章 未来への扉
閉じるドアの音が大きく聞こえて
びっくりする。
…見送る立場って、新鮮だ。
思い立って窓際に行き、
カーテンと窓を開ける。
冷たい朝の空気が
寒さではなく心地よさに感じて
思いきり、深呼吸をした。
身体中に、新鮮な酸素が巡る。
…一番、優しい声で、呼びたい。
来た。夏希が出てくる。
『夏希~っ!』
声をかけると、見上げて、笑顔。
『いってくるねっ。』
…と、手を振ってくれた。
手を振り返して、
その後ろ姿を見送る。
角を曲がるまで、
2回、振り向いた夏希。
2回とも、
大きく手を振り返した、俺。
自覚?あるぞ。
俺達、今、堂々と、バカップル(笑)
いいじゃん。
これからの長い道のり、
こんな日ばっかりじゃないってわかってる。
だから、
最初のうちくらい、
こうやって甘く柔らかく、いさせて。
クロが言ってた
『1+1=2』の二人に、なろう。
ぶつかった時も、
跳ね返さないで
受けとめられるように。
やっと手に入れた宝物が
壊れてしまわないように。
手のひらの中の合鍵を見る。
夏希からもらった、"大好き"の形。
…愛情は、目に見えないから
ちゃんと言葉にしなくちゃな。
言葉は消えてしまうから、
ちゃんと態度で示さなくちゃな。
…だから、
家族に紹介しよう。
指輪を買いにいこう。
そして、式の準備も。
二人の未来を
二人で作る。
ひとつ、ひとつ、心を揃えて。