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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第20章 未来への扉



翌日。

送賓後の披露宴会場を覗くと、
早瀬が、演出で使っていた
ガーデン用のたくさんのキャンドルを
片付けているところだった。

扉を開けると、冷たい風。
一瞬、戻ろうかと思ったけど(笑)
俺もガーデンに出る。

『手伝うよ。』

『ありがとう。』

顔をあげた早瀬が
珍しく素直だ。

『気持ち悪いくらい素直じゃん。』

『だって寒いから。
手伝ってくれるなら誰でも嬉しい(笑)』

ひとつ灯りを消すたび、
少しずつ暗くなっていくガーデン。
他に誰もいない。
思いきって、聞いてみた。

『なぁ早瀬、
最初からこの仕事がしたかった?』

『え?』

…唐突な質問。
明らかに驚いた顔をした後、
すぐに空気を読んだように、
作業の手を休めることなく
淡々と答える。

『全然。
就活、落ちこぼれだったからね。
受かればどこでもよかったよ、正直。
始めた頃は、結婚式に出た経験も
ほとんどなかったし。
最初は、知らない人のお祝い事なんて
興味もなかったなぁ(笑)』

『…でも、今、仕事、好きだろ?』

『好きだねぇ。夜久君もでしょ?』

『…うん。だからさ、
どうやったら、俺の仕事のこと、
夏希に理解してもらえるか、
ずーっと考えてるけどわかんなくて。』

『…なかなか、理解してもらえないよね。
休み、あわないし。時間、不規則だし。
わかるわかる。
最後は説明すんのも面倒になってく…』

あれ。
早瀬も、
それで苦労したこと、あんのかな?
…ま、それは今は置いといて。

『だよなぁ。
わかってもらうことって、
やっぱ、無理なのかなぁ…』

『こればっかりはねぇ。
ゼロから当日までの道のりを全部やってみて
初めてわかる喜びだから…』

ん?
んん?
んんんっ?

『早瀬、今、なんて言った?』

『え?やってみて初めてわかる喜び?』

暗くなったはずのガーデンの中で
一ヶ所だけ、
ぬくもりが集まっているのは
箱に綺麗に納まったキャンドル。

炎は消えているのに
そこだけほんわりと
まだ、熱が感じられそうなあたたかさ。

…あぁ、これだ。


『早瀬、一生の頼みがある!!』


クロからもらった鍵。
早瀬からもらった鍵。

これで、
俺と夏希の未来の扉、
開けられるかもしれない。


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