第20章 未来への扉

『…でもさ、
仕事をわかりたい、って言われても…
もしクロが彼女にそう言われたら、どーする？』

『えー？そんなん、考えたことないな。』

『じゃ、今、考えてくれよ！
俺、どーしていいかわかんねーもん。』

『んー…』

焼酎の中の氷をカラカラいわせながら
クロは、しばらく、しばらく、
しばらく考えて…

そして、言った。

『俺だったらさ、
…ごめんな、ちょっと言葉わりーけど…
多分、そういうタイプとは
最初から、つきあわない。
だから俺、夏希に女を感じねーんだわ。
今、わかった。』

『どーいうこと？』

『価値観。
俺、あんまり相手と同化したくねー、っつーか…
それぞれ、やりてーことやって
それで居心地いい方がいい。
一緒にいなくちゃダメ、ってのが
苦手なんだな、たぶん。』

…正真正銘の、一匹狼、か。…

『でもほら、それって、
どっちがいい、とかじゃねーじゃん。
夜っ久んと夏希は、
“１＋１＝２”になりたいタイプで、
俺は“１×１＝１”がいい、っつーか。
…わかりにくいな(苦笑)』

わかる。なんとなく、だけど。

『じゃ、俺、どーしたらいい？』

『さぁ…
なんとかして仕事が好きな理由、伝えて
共感してもらえよ。』

その方法がわかんねーっつーの(笑)

『…な、クロ、
俺と夏希見てて、めんどくせー、って思う？』

クククッ、と笑う顔は、
俺がよく知ってる、いつものクロ。

『思わねーよ。
真っ直ぐだなぁ、とは思うけど。
あまりにも俺とはタイプが違うから、
見てて楽しくてしょーがねー。
だからレスキューしたくなんのかな。』

『あのさ…夏希に伝えてほしいんだけど、』

『何？』

『あとちょっとだけ待っててくれ、って。
会わない間もずっと夏希のこと考えてるから、
俺を信じて待っててくれ、って。』

『えー、絶対、ヤダ。
そんな、こっ恥ずかしい伝言、
俺の口で再生できっか！自分で言えよー。』

『頼む！
次に連絡するときは勝負する、って決めてんだ。
まだ、作戦もたたねーし、
今は俺からは電話できねーんだって。
頼む、主将！』

『しょーがねーなぁ(笑)
そのかわり、絶対、決めろよー。』

『ありがとう。…俺、クロに頼ってばっかだな。』

『いや、結構、楽しんでっから。
他人の恋愛はおもろいわ(笑)』