第20章 未来への扉
一時間後。
クロと二人、小さなおでん屋へ。
例の夏希との紅葉狩りで
お土産を渡せなかったお詫びに
ワインご馳走するって言ったら、
クロは"ワインって気分じゃねーな"
…と言うから、
クロの行きつけだというこの店に来た。
促されるまま、カウンターに座る。
俺、こういう店、初めてだ。
クロは…
意外にも違和感なく馴染んでて驚く。
長く友達でいたつもりだけど、
まだ、知らないこと、あんだなぁ…
二人でおでんをつつきながら、
本題へ。
『クロんとこに連絡があったんだろ?』
『おぅ、もう1週間くらい前。
…あ、ヤキモチ妬くなよ?』
『それはもう大丈夫。
夏希もクロも信頼してっから。』
『成長してんじゃん(笑)』
『もう、そんなことで
グダグダ言ってる場合じゃねーもん。
…夏希、なんて?』
『自分から距離を置こうって言った以上、
その後、どうしていいかわかんねー、
って言ってたぞ。』
『…怒ってた?』
『いや、弱ってた。
意地はってるっていうより、
ホントにどーしよー、って感じ。』
『で?』
『絶対、夜っ久んから連絡あるから、
それまで信じて待て、って言っといた。
なのに夜っ久ん、グズグズしてっからさぁ。
もう、俺の方が待ちきれなくて
こーやって電話しちまったってわけ。』
"信じて待て"…って。
言ってくれたクロ。
待ってくれてる夏希。
あぁ、二人とも
俺のこと、信じてくれてんだな。
『…で、夜っ久ん、なんで電話しねーの?』
クロに、気持ちを、話した。
夏希といると、いつもお互いに
"ごめん"ばかり言ってしまうこと。
夏希が仕事や早瀬にすら
ヤキモチを妬いていること。
好きな気持ちがすれ違って
結局、言い合いになること。
それでも(少なくとも俺は)
ケンカしても大好きだし、
離れてるときほど気になること。
…全然、まとまらなかったけど
それでも思ってることを全部話して、
『答えがみつからないから、
今、電話したとしても
夏希を納得させてやれない』って。
クロはずーっと
『うんうん』『そんで?』『へぇ』と
聞いてくれた。
一度も『それはさ、』とか『だからぁ』
なんて話の腰を折ることなく。
俺の話をひとしきり聞いたクロは、言った。