第20章 未来への扉
ずっと、考えてた。
クリアしなければならないのは
何なのか。
夏希が、俺といることを
我慢でなく、楽しみや幸せだと
思ってもらうにはどうするべきか。
…ずーっとずーっと、
ずーっと考えてるんだけど
わかんなくて。
俺が転職する、とか
土日、なんとかして休む、とか
そういう非現実的なことではなく、
もっと、現実的なことが
何か、あるはず。
『さぁて、やりますか。』
エリさんからもらった香水を
デスクに置きに行っていた早瀬が
会場の後片付けに戻ってきた。
シャツの袖を捲って、サクサクと。
…さっきまでの、
あのウキウキとときめいた顔とは別人。
頭の中では、もう
明日の披露宴のことを考えてるに違いない。
早瀬もホントに、
この仕事が好きなんだよな。
それがわかるから信頼してるし、
コイツの頼みは、
出来る限り、なんとかしてやりたい。
(あくまで、仕事の上。 笑)
夏希にも、
俺のこと、そして仕事のことを
そうやって理解してもらうには
どうしたらいいだろう。
『…ゃく君、夜~久~君っ!』
『…ん?ぁぁ、ごめん、なに?』
『お腹すいた?』
『ぁ…そういや、すいたな。』
『ならばっ!
ボケーっとしてないで、はい、動く!
ご飯は仕事が片付いてからっ。』
ドサッ、と
俺の腕に荷物の山。
『はい、ここまでよろしくね!』
…隙がねぇなぁ(笑)
俺、やっぱ、夏希がいいや。
泣いたり笑ったり、
拗ねたりヤキモチ妬いたり。
最後に見た、
あの傷ついた顔を思い出す。
もう、1ヶ月、会ってない。
夏希…どうしてるんだろ。