第20章 未来への扉
テーブルの上の料理と飲み物が
やけに華やかに見える。
…言葉が見つからない。
どうしていいか、わからない。
ごめん、で、済むか?
抱き締めたりしたら逆効果だろうか?
…夏希がガタンと立ち上がり、
ハンガーにかけていた俺のスーツを紙袋に入れて、
差し出した。
『…ごめん。
笑顔で過ごそうって思ったけど、
嫉妬が勝っちゃった。
もりすけを理解しようって思ってるのに…
やっぱ、初恋の人は、好きすぎてダメだね。』
『…んなことねーよ!
だってもともと俺が悪いんだし、』
『…私といると、もりすけ、いっつも
ごめんって言わされるね。
仕事なんだから悪くないのに。
私こそ、ごめん。
…今日は、もう、笑えそうにないや。
申し訳ないけど一人にしてもらっていい?』
ダメだ。ダメに決まってる。
『…一人になんか、しねーよ?
こんな状態で一人になったら、
ロクなこと考えねーだろ?
夏希、悪くねーから。
な、笑わなくていいから一緒にいよう。
…だって、イブだぞ?』
『…一緒にいて、気まずくて、
またごめんってどっちかが謝って?』
『…笑わなくていいし、謝らなくていいじゃん。
一緒に眠ろ。
いや、その…何もしないから。
一緒に眠ってさ、
また明日の朝になったら、気分も違うって。な?』
『もりすけがいたら、泣けない。』
『なんでだよ!』
『またもりすけが、自分を責めるから。』
『じゃ、どーすりゃいいんだ?』
『…ごめん。帰って。』
…それが夏希の、望み?…
『わかった。』
荷物をもって、立ち上がる。
『…もりすけ、やっぱり私達、
しばらく、距離、おこうか。』
なんで?
我慢しないで話し合って
たまにはケンカもしながら、
でも、この一年、うまくやってこれたじゃん。
今までと、何が違う?
『そんなに怒んなよ…』
靴を履きながらつぶやく俺の後ろから
追いかけてくる声。
夏希らしくない、弱い声。
『ごめん。怒ってるんじゃない。
自分の小ささに腹が立ってる。
もりすけは、全然悪くないから。』
…んじゃ、なんで俺、帰んなきゃいけねーんだ?
なんで夏希が一人で泣かなきゃいけねーんだ?
誰が悪い?何が悪い?
大好きなだけ、なのに。
好きだから、一緒にいたいだけなのに。
ずっと一緒にいたいのに。