第20章 未来への扉
『…ごめん、やっぱりいい。』
『なんで?』
『答え、わかってるのに
言わせようとしてる自分がヤだ。』
『言えよ。それで安心できるなら、いいじゃん。』
『だって、ヤキモチだもん。』
『自分でわかってんなら世話ねーや。
ますます、我慢すんなって。』
『…じゃあ聞くよ。
大事、とかじゃなくて、
優先順位としては、仕事が一番?』
…うん、そんなことだろうと思った。
『大事、なのは、夏希。
だから毎日、連絡とってんだろ。
優先順位は…
そりゃ、そこは比べるもんじゃないって、
ホントは夏希もわかってんだよな。』
…嘘は、つけない。
大事、と
優先順位は、違う。
優先順位なら…普段は、仕事だ。
それは、夏希もわかってるはず。
『…私より早瀬ちゃんの方が
もりすけのこと、理解してくれるんじゃない?』
早瀬?
あぁ、俺がクロに嫉妬したのと同じか。
お互い様、だな。
『早瀬と夏希ってなんとなく似てるのに、
なんで夏希のことはこんなに好きで
早瀬のことはなんともないんだろな。
早瀬は、
俺を理解してる訳じゃねーよ。
仕事を理解してるだけ。』
『でも私、もりすけが
仕事や早瀬ちゃんの話するたび
私の居場所がなくて、ヤだ。
もりすけのことを一番好きなの、私なのに。
私より、もりすけの心、占めてるみたいで。』
…夏希の心に
翳りが広がるのがわかる。
それを自分で止められないことも。
俺もあの時、同じだった。
嫉妬心って、ホント、厄介だ。
『わかった。
じゃ、仕事の話とか、しないようにする。』
…その時、電話がなる。
しまった、音、切ってなかった。
『…出れば?』
誰から?
げっ、早瀬!
最悪のタイミング…
『いや、いい。』
…夏希と会ってるってわかってて
かけてくる、ってことは
今じゃなきゃいけない話なんだろうけど…
今、一番出れねーよ!
『…出たくてたまらない顔してる。』
『んなことねーし。』
『やましくないなら出たらいいじゃん。』
バッカ早瀬!
『んじゃ、
やましくねーから、出るよっっっ!
…もしもし、なんだよっ!
急ぎじゃなかったら、明日、ぶっ飛ばすぞ!』