第14章 祝福の拍手
烏養さんが、
店のシャッターを閉めに出てきた。
『こんばんわ。』
『うぉっ?!山口…
びっくりしたじゃねーか。
なんだ?腹が減ったのか?
肉まんなら、もう、売り切れたぞ。』
…烏養コーチの中で、俺はまだ
腹を減らした高校生と同じなのかな、
と思ったら、おかしくなった。
緊張していた気持ちが解れる。
『あの、聞きたいことがありまして…』
『…とりあえず店、閉めっから、中、入れや。』
足を踏み入れた店の中は、
タイムスリップしたかのように
あの頃と同じだった。
『かわらないですね。』
『だろ?
俺の毎日も、あの頃と同じだよ。
店番して、バレー教えて…
ま、成長してねーってことだな。
それに比べたら、お前ら、すげーよ。
みんな、立派に社会人になって、
みんな、ちゃんと結婚して。
山口も、すっかり役場の職員だもんな。
…で、聞きたいことって、なんだ?
練習の時じゃなくて
わざわざここまで来たってことは、
他のヤツがいちゃ話せねーことなんだろ?』
あぁ、
俺たちと一緒に
泣いたり笑ったり
悩んだり喜んだりしてくれてた
あの頃の烏養さんだ。
変わらない、兄貴のような人柄。
ちゃんと、話そう。
俺は、
大事な二人、
…早瀬さんにも、烏養さんにも…
どちらにも
幸せになってもらいたいから。
『烏養さん…
早瀬さんと、やり直すつもりはないんですか?』