第117章 シルバーアクセサリーは温泉で黒くなる。
のぼせて倒れた葵咲を抱えて脱衣所へと移動した土方。その場にすぐさまたまが駆け付けてくれたのだ。
そして葵咲に浴衣等を着せて、宿泊部屋へ運ぶのは土方に託したという訳である。
勿論、その事を正直に告げれば自分が葵咲の裸を見た事がバレてしまう。土方は自分が湯船から上がった際に後ろで葵咲が倒れる音が聞こえ、すぐにその場にたまが駆け付けて葵咲を運び、身支度を整えてくれたのだと説明した。
葵咲「そ、そうだったんだ。」
第三者の名が提示された事で葵咲は納得の姿勢を見せる。流石に本当に本人に確認されればバレるような嘘を吐かないだろう。
誤解が溶けた(?)ところで二人の間に沈黙が降りる。
葵咲・土方「・・・・・。」
(葵咲:き、気まずい…。)
普段から話し慣れている間柄ではあるが、ハプニングがあった事で妙な空気が流れている。しかも当初は土方の手助けをしていたはずが、のぼせてぶっ倒れるという失態を犯して結局土方に看病してもらっていた。
穴があったら入りたい。
葵咲は顔を真っ赤にして土方から視線を反らす。
そんな葵咲を見てか見ないでか、土方は葵咲にいつもどおりのトーンで言葉を掛ける。
土方「もう大丈夫か?」
葵咲「え?あ、はい。」
土方「じゃあ…ゆっくり休めよ。」
そう言ってゆっくりと立ち上がる土方。
葵咲「えっ!」
それを見た葵咲は思わず土方を見上げて彼の浴衣の裾をきゅっと引いた。
土方「え?」
引き止められた事で土方は葵咲を見下ろす。葵咲は無意識だったのか、土方と目が合って初めて自分が裾を引いていた事に気が付いた。
葵咲「あ、いや、ご、ごめん!何でも…。」
慌てて掴んでいた手をパッと離す。気まずい事この上ない。葵咲は顔を真っ赤にして再び俯く。
少し様子がおかしな葵咲が気になった土方は、再びその場へと腰を下ろす。再び二人の間に沈黙が落ちた。
(葵咲:なんで引き止めてんの私ィィィィィ!!)
引き止めてしまったものの、無意識だっただけに話す言葉が見付からない。葵咲はぐるぐるしながら布団へと視線を落とす。