第117章 シルバーアクセサリーは温泉で黒くなる。
葵咲が呆れ眼で土方を見ていると、脱衣所の方から何やら物音が。誰かが温泉へ入ってくる気配がする。二人は慌ててそちらへと目を向ける。
お登勢「やっぱり疲れ取るにゃ温泉に限るねぇ。」
キャサリン「ソノママ昇天シロヨ、ババア。」
お登勢「なんだってぇ!?」
お登勢一行である。
お登勢達は仙望郷の手伝いが終わり、温泉に入りに来たようだ。奥には妙達がおり、入口からお登勢達が入って来るとなると挟まれる形になる。
そんな危機的状況に土方は冷や汗を垂らす。
土方「!?」
葵咲「土方さん、こっち!」
土方「!」
葵咲は状況を瞬時に把握して土方の手を引く。そして葵咲達が浸かっている温泉の隅に物陰となる視覚を見付けてその場所へと誘導した。
幸い、その物陰となる場所は湯船の中。湯気が立ち込めていて姿は視認出来ないだろう。
お登勢「温泉で身体温めるだけで、身も心も癒されるねぇ。」
葵咲・土方「・・・・・。」
何とか気付かれずに済んだが、すぐ近くにお登勢達が浸かっている。油断は出来ない。二人は物音を立てないようにと気配を消し、息を殺した。
(土方:おい、どうすんだコレェェェェェ!!見付かりゃ痴漢扱い確定じゃねーかァァァァァ!!)
何としても見付かるわけにはいかない。真選組としても、男としても。土方は手に汗握るものを感じながら気配を消す。そんな状況で、葵咲はプッと吹き出した。
葵咲「クスクスクス…。」
土方「笑い事じゃねーだろ!」
土方にとっては死活問題。笑われる事に苛立ちを覚える。そんな土方に目を向け、葵咲は涙目になっている目を擦りながら言葉を返した。
葵咲「あ、ごめんね。前にもこんな事あったなぁって。」
土方「あん?」
葵咲「ほら、屯所の大浴場で。あの時は立場が逆だったけど。」
土方「あー…そういや、そんな事もあったな。」
それは雪月花、第9訓のお話。
隊士達が遠征に出て暫く戻って来ないと聞き、先に風呂に入った矢先に戻ってくるというハプニング。たまたま先に入って来た土方が葵咲を護るべく動いてくれた件だ。
葵咲に言われてその事を思い出し、記憶を辿るように空を仰ぎ見る土方。そんな彼の様子を見て葵咲はなおもクスクスと笑う。