第117章 シルバーアクセサリーは温泉で黒くなる。
脱衣所で衣類を脱いで温泉へ。
掛け湯をしてから湯船へと入る。湯気が立ち込めている為、辺りの見通しは悪いが、その湯気の先に誰かがいる気配を感じる。まぁ先客がいる事に驚きはない。だが、もはや知り合いしか宿泊していない温泉旅館。出来れば顔を合わせずに一人ゆっくりと浸かりたいものだ。
土方は絡まれる事を避けるように、チラリと一瞥だけする。だがその時、風が吹いて湯気や霧が晴れてしまう。そして先客とバチリと目が合ってしまった。
土方「…ん?」
葵咲「え?」
葵咲・土方「・・・・・。」
石化したように固まる二人。それもそのはず。お互いがお互い、ここにいるはずのない性別の人間を見ているからだ。そしてそのおかしさを認識した二人は大声で叫ぶ。
土方「のわァァァァァ!!」
葵咲「きゃあああァァァァァ!!」
土方「なんでオメーが男湯にいやがんだァァァ!!」
葵咲「なんで土方さんが女湯にいんのォォォ!!」
お互いが背を向けながらも同時に各々の認識している情報を叫ぶ。そしてそれを聞いた土方が葵咲の認識について指摘する。
土方「は!?女湯!?ここは男湯だろ!!」
どうせ葵咲(天然女)の事だ、早とちりで間違えたのでは?そんな疑いを持って叫ぶ。
だが葵咲は至って冷静に。ここに入るまでの経緯も踏まえて反論した。
葵咲「何言ってんの!ここは女湯だよ!!妙ちゃん達と一緒に入ったもん!!」
土方「えっ!?」
気持ちを静めるべくして一人で温泉へと訪れた葵咲だったが、入口でたまたま妙と九兵衛に出くわしたのだ。入った後は考え事がある、と言って別行動。一人湯に浸かってあれこれ考えて今に至る。
話を戻すが、複数名でこの場に入ったとなると間違える可能性は極めて低い。しかも葵咲達は先程この場に訪れている。まず間違えないだろう。ここは時間帯によって男女場所を入れ替える温泉でもない。
その事に土方は一瞬で青ざめた。
そして二人の騒ぎ声を聞いた妙と九兵衛が奥の湯船から声を上げる。
妙「葵咲ちゃん?どうかしたー??」
葵咲「ほらっ!!」
土方「!?」