第117章 シルバーアクセサリーは温泉で黒くなる。
少しの沈黙が降り、山崎はフゥとため息を吐いて土方へと静かに言葉を掛ける。
山崎「…でも、好きなんでしょ?葵咲ちゃんの事。」
土方「!」
山崎「いい加減、素直になったらどうですか?」
いつものからかい文句ではない。今度は真剣に。こう見えても二人の事を心配しているのだ。その事は言葉のトーンで土方にも伝わる。
土方はいつもの冷静な表情に戻し、少しの間 口を噤む。だがやがて口を開いて静かに言葉を押し出した。
土方「・・・・まぁ、そうだな。」
山崎「・・・・・。…えぇっ!?えらく素直ォォォ!?明日は槍でも降るんですかァァァァァ!?」
まさか本当に素直に答えてくれるとは思ってもみなかった。いや、何なら土方はまだ無自覚なのかもしれないとさえ思っていた。故に驚きを隠せず身を捩じらせる山崎。そんな山崎に土方は冷ややかな視線を送る。
土方「素直になれっつったのは何処のどいつだよ。」
当然のツッコミである。土方はツッコミながらも山崎の返しは求めていない様子。土方はフゥと一つ息を吐いた後、山崎に背を向けながらポツリと呟いた。
土方「…それが、葵咲(あいつ)を護る事に繋がるんならな。それが必要になる日が来るかもしれねぇって話だよ。」
山崎「副長…。」
静かに土方の背を見送る山崎。土方は本当に葵咲の事を大切に想っている。その事が強く伝わってきた。故にそれ以上言葉を掛けられずに土方を行かせてしまう。
何とも言えずに山崎が呆然と立ち尽くしていると、更に背後から近藤が山崎に言葉を掛けた。
近藤「イマイチ踏み込みが甘いな。」
山崎「ぬぉぉ!?局長ォォォ!いつからそこにいたんですか!!」
まさか自分の後ろにも同じように見守っている者がいるなんて思いもしていなかった。山崎は再び驚きのあまり身を捩じらせる。
近藤はそんな山崎には構わず、土方の背を見据えたまま静かに言葉を紡ぐ。
近藤「まぁ細かい事は気にするな。ザキ、俺達であいつの背を押してやるぞ。」
山崎「はい!!」
二人は温泉へと足を向けた。