第116章 手が届かないよりも、手の届くのに触れられない方が辛い。
松本の気持ちを理解する近藤。
だが近藤はそんな松本の言葉に同調するのではなく、頼もしい笑顔に変えて言葉を紡いだ。
近藤「…だとしたら、幸せはすぐそこだ。」
松本「え?」
近藤「償えない罪なんてねぇ。罪を償った先には必ず幸せがあるもんさ。先生はもう十分に罪を償ってるだろう。」
松本「近藤さん…。」
決して慰めや社交辞令で放たれた言葉ではない。それは魂の込められたその発言や、それを放つ瞳を見れば分かる。松本は胸の内に温かくなるものを感じて近藤を見据える。
そして近藤は松本へと視線を移して不敵な笑みを浮かべた。
近藤「それに、人間関係なんてのは、どうなるか分からねぇ。諦めるのはまだ早ぇんじゃねぇか?」
松本「…近藤さんも存外S気質ですか?」
近藤「どっかのドSバカが移っちまったのかもな。」
まるで葵咲への想いを諦めさせてくれないような発言をする近藤に、松本は苦笑いを浮かべる。それを見た近藤は笑って言葉を返した。まだまだ苦行の日々は続きそうだ。
だが松本は苦笑から温かみのある微笑へと変えて言葉を紡ぐ。
松本「欲を言えば自分が彼女を幸せに、ですが、私にとっての幸せは葵咲さんの幸せですから。その言葉に嘘偽りはありませんよ。」
近藤「…そうか。」
二人は葵咲達の傍へと歩み寄り、皆で将軍を抱えて旧館を後にする。そうして波乱を含んだ肝試しは幕を閉じた。