第116章 手が届かないよりも、手の届くのに触れられない方が辛い。
山の上から旧館内のスタンド攻防の様子を見降ろしている怪しい影。影は難しい顔を浮かべて唸る。
「・・・・・。」
そんな陰に近付く別の者の気配が。気配に気付いた影だが、影は特に驚く様子も慌てる素振りもなく旧館を見据えたまま。影に近付いた気配、それは宇宙海賊“鐵”の青髪の青年、翡翠だった。
翡翠「どうです?例の薬の実験は上手くいきましたか?瑠香。」
瑠香と呼ばれた女、それは先程葵咲達が温泉にて遭遇した女だった。瑠香はフゥと軽くため息を吐いて翡翠の方へと振り返り、彼を見上げる。
瑠香「う~ん、ダメねぇ。やっぱり肉体と魂、どちらも揃わないとあの薬は効力を発揮しないみたい。“ゾッコンにさせる”、までには至らないわん。」
どうやら瑠香はスタンドを使って薬の実験を行なっていた様子。先程銀時達や山崎達が襲われたのは瑠香の仕業だったのだ。瑠香の言葉を聞いた翡翠もまた、一つため息を吐く。そして腕組みしながら瑠香から旧館の方へと視線を移した。
翡翠「霊体にも死体にもイマイチ、という事ですか。」
瑠香「ええ。少しの間なら言う事聞いてくれるけど、すぐに心が離れちゃうみたいなの。」
翡翠「そうですか。」
瑠香は何らかの薬をスタンドと死体の両方に投与したらしい。だが実験は上手くいかず。そしてそれを聞いた翡翠は別の視点に話を切り替える。
翡翠「人間はどうなんです?」
瑠香「この間カッコイイ赤髪のお兄さんに治験をお願いしたけど…上手くサンプルが取れなくてねぇ。」
翡翠「・・・・・。」
二人は眉根を寄せて唸った。そしてひとまず実験は打ち止めにして立ち上がる。そんな瑠香へと翡翠は言葉を掛けた。
翡翠「改良出来そうですか?」
瑠香「どうかしら?まぁ研究はしてみるけど、そっちが本命じゃないしねぇ。例の薬の研究に移りましょ♡」
ニッコリと妖艶な微笑を浮かべる瑠香。その微笑を受けて翡翠は目を瞑って頷く。
翡翠「今のところ、貴女と私、それに“あの男”しか適合者はいませんからね。では行きましょうか。」
(瑠香:それにしても…あの娘(コ)とこんなところで再会するなんて…。これも巡り合わせかしらね。)
翡翠「どうかしましたか?」
瑠香「いいえ。なんでもないわ。行きましょ♡」
そうして二人は山中の闇へと消えて行った。
