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My important place【D.Gray-man】

第38章 幾哀心







『"14番目"に為ったら、お前は大事な人間を殺さなきゃならなくなる…って言ったらどうする…?』





 大体、なんだよそれ。
 なんで最後にそんな物騒な言葉残していくんだ。

 師匠はいつもそうだ。
 僕の周りを掻き回すことしかしない。


 大事な人間なんて、昔はマナだけだった。


 名前も何も持っていなかった僕を拾ってくれた人。
 "アレン"という名を僕に授けてくれた人。
 そんなマナを僕の所為でAKUMAにして、僕の所為で壊してしまった。
 最後まで"愛してる"と口にしていたマナを、この手で。

 …その言葉も、僕自身に向けられたものかはわからないけど。

 でもそんなマナをAKUMAにして壊してしまったのは僕だから。
 それからはAKUMAの為だけに生きようと、AKUMAだけを思おうと生きてきた。
 AKUMAに捕われた魂を救済する為だけに、エクソシストになろうと。


 だけど気付いたら、僕の周りには見放せない人達ができていた。


 教団を"ホーム"だと言うリナリーの言葉が、じんわりと胸に染みるようになった。
 "おかえり"と迎えてくれる教団の皆に、照れ臭さを感じるようになった。





『自分の意志を曲げる必要はないよ。アレンは今のままでいい。アレンのそういうところ、私好きだから』





 そんな"今"の僕をそのままでいいと、笑って肯定してくれた。
 好きだと言ってくれた彼女の言葉に、心が満たされるような気がした。


「…っ」


 大事な人って誰なんですか、師匠。
 僕のこの目に映っている人は、もうマナだけじゃない。

 大切にしたい人達がいる。
 守りたい人達がいる。
 笑っていて欲しい人達がいる。

 もう、マナのようなことは繰り返したくない。


 大事な人をこの手で殺すなんて。





 そんなの嫌だ。










「アレンっ」










「──!」


 はっとする。
 いつの間にか俯いていたらしい、顔を上げれば。


「ガァッ」

「…ティム?」


 目の前に飛び込んできたのは、捜していた金色の丸い球体だった。

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