My important place【D.Gray-man】
第38章 幾哀心
そりゃーユウは他人と馴れ合わない性格だから、ああして一緒に飯食うだけでも珍しいけどさ。
でも雪に手を上げる時は上げてるし。
前もオレの代わりに先にシバくって、雪の背中掴んで引き摺ってったしなぁ…ユウの奴。
……。
……そういやあの後、オレ結局シバかれなかったけど…雪はどうなったんかな。
まさかオレがシバかれなかったのって、代わりに雪がその制裁を喰らったからなんじゃ…
「雪っ」
「ん?」
そう思うと急に心配になって、後ろを通り過ぎようとしていた雪に咄嗟に声をかけていた。
足を止めた雪が、トレイ両手に振り返る。
「あ、ラビ。おはよう」
「はよーさん。なぁ雪、聞きたいことあんだけど」
「何? 私仕事に行かなきゃいけないんだけど…」
「すぐ済むって。今更なんだけどさ…あの日、大丈夫だったさ?」
「あの日?」
きょとんって効果音がつきそうな顔で首を傾げる。
その動作とか表情とかちょっと可愛いんだけど…って違うオレ。
今そういう思考要らないっ
「ほら、ユウにオレらの写真見られちまった日のこと。ユウに強制連行させられたろ。シバかれなかったかなって」
「ああ…ラビが私を売った日のことね」
「すみませんでした」
冷ややかな目で見てくる雪に深々と頭を下げる。
そこは全面的に謝るさ。スミマセン。
「はぁ…いいよ、もう。乱暴なことはされなかったから」
「そうなん?」
思わずほっとして顔を上げれば、首に片手を当てながら溜息をつく雪が見えた。
その目は斜め下、食堂の床をなんとなしに見つめている。
ゆっくりと息を吐いて作られる溜息。
僅かに伏せた目にかかる睫毛。
…あれ?
なんさ…上手く言えねぇけど、なんかドキドキする。
仕草一つ一つが妙に目につくというか…こんな雪の表情、オレ見たことあったっけ。
なんつーか……"女"っぽい。
「でも貸し一つね」
そう続きを口にした雪の目が、床からオレに向く。
瞳が重なる。
ドキリとした。