My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
「ロード、何が欲しいんだよ」
「なんでも言っていいよっ」
左右から覗き込んでくるジャスデビに、どうしようかなぁと考える。
あまーいお菓子でもいいし、遊べる玩具だって嬉しいかな。
フリフリの新しい洋服だって欲しいし…でもそれは、シェリルおとー様に頼めば全部買ってもらえるものだしねぇ。
「なんだよ、なんもねェの?」
「なんでもいいんだよ?」
「…あるよぉ、一つ」
唇に当てていた人差し指を、その場に立てる。
そのまま覗き込む二人に、にっこりと笑ってあげた。
「雪」
見えたのは、ぽかんと固まる二つの顔。
「ボク、雪が欲しいなぁ~」
もう一度はっきりとそう告げれば、二人は無言で目を逸らした。
わぁ、後ろめたさはあるんだ。
「あーあ。二人がちゃあーんと雪を連れて帰ってきてくれてたら、今頃雪にもお祝いしてもらえてたのになぁ」
「ロード……そいつは言うな…」
「ヒ…デロは言ったんだよ! あの子がラースラじゃないかなって…ッ」
「うわ! お前オレを売るんじゃねぇよ!」
ぎゃあぎゃあと喚くジャスデビを余所に、溜息一つ。
ほんと、偶然出会えたのに。
なんでジャスデビは雪がラースラだって気付かなかったんだろう。
ボクは一目でわかったのに。
『えーん、えーん』
引き寄せられるようにして、微かに垣間見た"夢"。
小さな女の子が怪我した足を引き摺って、暗いおうちに一人で帰る後ろ姿。
『…泣いてるのぉ?』
呼べば、振り返ったそのコの両目にはいっぱいの涙が溢れていた。
それを見てすぐにわかった。
あ、このコはボクの"家族"だって。
ノアメモリーに惹かれたから気付いたんじゃない。
雪を見てわかったこと。
だって泣かせたくないって思ったんだもん。
人間はキライ。
なのにそんな気持ちを持てたのは、きっとあのコを大切だと思ったから。