My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
「私は若干、腰が痛いんだけど…」
「……此処で待ってろ。お前の服取ってきてやるから」
思わず腰に手を当てれば、立ち上がったユウがドアに向かう。
窓から差し込む光は、もう茜色のもの。
すっかり夕方になっちゃったけど、こんな格好で教団内は彷徨けないし…取ってきてくれるのはあり難いけど…。
何より早く汗を流したい。
部屋に個室シャワーとか取り付けてもらいたいなぁ…それなら便利なのに。
エクソシストなんだし、それくらい優遇されてもいいんじゃないかな。
ヴァチカン上層部ならそれくらい設備するお金、持ってるよねきっと。
「いいか、誰が来てもドアは開けるなよ」
「うん」
「すぐ戻る」
「いってらっしゃい」
念を押しながらドアを開けるユウに、軽く手を振って見送る。
ガチャッと開くドアに、見慣れた廊下が続いて──
「あ、いたのね神田」
「「!?」」
思いもよらない姿がドアの目の前にあって、思わずユウと同時に息を呑んだ。
え、何故其処に。
「調度良かった。そろそろ夕飯だし、神田と雪も一緒にどうかなって誘いに来たの。ついでに雪の恰好の感想も聞きたいなって──」
にこにこと笑顔で言いながらユウを見ていた目が、部屋の中に移って…ばちりと目が合った。
中国人美少女、リナリーと。
「っ!」
瞬間、バタン!と勢いよく目の前のドアを閉じるユウ。
あ。
『…神田? 今其処に雪の姿が見えた気がしたんだけど…酷い恰好した』
うわ…ドア越しに届くリナリーの声がなんか怖い。
いつもと変わらない口調なのに、何故か寒気がする。
「…見間違いだろ」
『じゃあ開けてもらえる?』
「……」
『開けてもらえる?』
うわ…あのユウがダラダラ冷や汗流してる。
背を向けてるから顔は見えないけど、絶対青い顔してる。
『開けないなら…蹴り破るわよ』
「「!」」
まじでか!
声は普段と変わらないのに、明らかに急激に下がる部屋の温度。
それはドア越しに感じるひんやりとした殺気の所為だと思う。