My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「よくできてますねー」
『キャハハハハ』
ふにふにと人形の腹部をチャオジーが押すと、その度に人形が"声"を上げる。
わかった、わかったから。なんか怖いからそれ以上弄るのやめようっ。
「チャオジー、それ元にあった場所に戻してきて。まだ見て回らなきゃいけない部屋は沢山あるから」
「あ、はいっス」
頼めばすんなりと、チャオジーは人形を元にあった場所に置いてくれた。
「此処にも人の痕跡らしいものはないね…」
「よく目撃されてた人影って、なんなんでしょう」
「大方、あの人形なんじゃね?」
その後、辺りを探索してみたけどイノセンスらしい気配も怪奇現象的なものもなく。幾つ目かわからない部屋の中で、溜息をついた。
「あんな小さな人形が、人影に間違われるはずないでしょ」
「そうだとしても、変な声が聞こえたってのはあれが原因かもしんねぇさ」
「…確かに」
人差し指を立てて推理するラビに、ふむと考える。
あんな音声付き玩具なら、鼠か何かが触れた際にでもあの"声"を上げそうだし。
それを変な声を聞いたと勘違いした人がいても、可笑しくはない。
「でも声はそれで説明がつくにしても、人影なんて…あ。」
チカチカと持っていた懐中電灯の明かりが途切れ出す。
え、もう電池切れ?
「ちゃんとセットしたのに…」
任務に出る際に、万全の態勢で道具も用意していく。
小さな整備ミスが生死を分けたりもするから、そこを怠ったことはない。
だからこんなに早く切れるはずはないんだけどな…。
懐中電灯を軽く叩いて、電源を入れ直す。
それでもチカチカと途切れる光は止まることなく、ふっと光は消えてしまった。
「あ」
「げ」
「うわー、真っ暗っスね」
消えて気付く。
明かりがないとまともに床も見えないくらい、真っ暗な部屋にいたことに。
「外も、もう真っ暗ですもんね」
いつの間に陽は暮れていたのか。チャオジーの言葉に窓の外に目を向ければ、もう暗い空が覆っていた。
…仕方ない。