My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「これだけ広い建物なら、今から全部屋見て回ってたら夜になっちゃうかも…」
「げ。まじかよ、オレ夜にこんな所いたくねぇんだけど…」
「でもやっと見つけたんですし! 頑張りましょう!」
軽い足取りで、チャオジーが真っ先に廃墟に踏み出す。
「すげーな、あいつ…」
「男らしいね、ほんと…」
思わずラビと二人で感心し合う。
本当、今回はチャオジーが一緒でよかった。
「男らしいって。男の魅力はそれだけじゃないさ」
「でも頼り甲斐あるよ」
「今回は、だろ」
むすっとした顔で口を尖らせるラビに、はいはいと相槌を返す。
その今回だから、とっても頼り甲斐あるんです。
「二人共、ほら早くっ行きましょう!」
「あーハイハイ。待てってチャオジー」
「うん、待って待って」
笑顔でほらほらと催促するチャオジーを追って、ラビと一緒に廃墟に踏み込む。
夕日で染まるその大きな廃墟は、窓ガラスの奥を暗く映し出していた。
静かに、ひっそりと。
──パキ
踏み付けた木屑が、砕けて小さな音を立てる。
「すげぇ荒れ放題さな」
「埃も凄いっス…」
「仕方ないよ、結構な築年数らしいから」
階段も廊下も各部屋も、何処も荒れた瓦礫や木屑で床は埋め尽くされていた。
設置された窓ガラスの位置の所為か、夕日は足場に入り込まないようになっているから視界は暗い。
荷物から懐中電灯を取り出して、明かりを付ける。
光を持ってるのは私だけだから、必然的に先頭を進むこととなった。
パキ、パキ、と木屑を砕きながら進む。
足場はガタガタで悪いから歩き難く、中々進まない。
これは本当に夜になってしまうかもしれない。
「築年数ってどれくらいなんさ?」
「さぁ。情報だと数十年前ってあやふやなんだけど、ご老人が子供の頃に見たことがあるって言ってたらしいから、結構な年数だと思う」
「どーにも曖昧な情報ばかりさな~…」
「仕方ないよ、そういうものもあるって」
すぐ隣にいるラビは、辺りを伺うように見ながらその口から言葉が止まることはない。
それと同じく私の口も動き続けていた。
だって黙ってしまうと、なんだか怖いんです。