My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「ラビー見つかったーっ?」
高い空の上を、チャオジーと見上げて呼びかける。
視線の先には一直線に高く高く伸びる鉄槌。
その先端にちょこんと器用に座っているのが、このイノセンスの持ち主であるラビだ。
「雪さん、もう夕日が見えますよ…」
「うーん…だねぇ」
隣で呟くチャオジーに苦笑しかできない。
お昼休憩を済ませた後、色々とラビに探してもらったのに、何故かまるで見つからない廃墟。
なんでだろう。
「とりあえず陽が落ちる前に、一度退散」
「雪っ!!」
不意にふわりと風が吹く。
唐突にこちらに突っ込んできたラビによって。
勢いよく鉄槌で急降下したかと思うと、器用にしなった鉄槌の柄は減速して、ひらりと目の前にラビが降り立った。
「あったさ!」
「え? 嘘っ」
「本当ですかっ!」
思いもかけない言葉に、思わずチャオジーと笑顔が生まれる。
諦めかけてたから、つい嬉しくて。
嬉しくはなった。
なったんだけど、も。
「こんな所じゃ見つからないはずだよね…」
ラビが空の上から見つけてくれた廃墟は、森の中の大きな岩場の後ろに存在していた。
そのすぐ隣は切り立った崖。
これじゃあ簡単に見つからない訳だ。
「てか、すげー如何にもな感じなんですけど…」
「うわーまるで映画に出てきそうな建物っスね!」
私の右側で、顔を青くして呟くラビ。
私の左側で、キラキラした顔で弾んだ声を上げるチャオジー。
そう、見つかって嬉しかったんだけども。
目の前に静かに存在するその廃墟は、廃れてコンクリートも剥げかけた"如何にも"な雰囲気を醸し出していた。
鬱蒼と多い茂った背の高い草に囲まれ、あちこち瓦礫と化している。
中の鉄パイプが剥き出しになっていたり、窓ガラスが割れていたり。
そして何よりも恐怖を煽るのは、その大きさ。
大きい。でかい。立派。ええと…とにかく静かにぬっと建つその存在は嫌という程静まり返っていて、落ちていく夕日に照らされる様はなんとも不気味だった。