My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「あっすみません! 急に話に割り込んで…ッ」
私達の視線に、急にはっとしたチャオジーの顔が焦る。
そこにはもういつも通りの、人の良さそうな顔をした彼がいた。
「まぁ俺なんかじゃ、まだまだノアを倒すまでには至らないんスけど」
ぽりぽりと頬を掻きながら苦笑するチャオジーに、すぐに言葉をかけることはできなかった。
教団にはAKUMAやノアを倒すという信念を持って働いている人達が大勢いる。
聖戦に勝つ。その目的が大前提として成り立ってる組織だから、チャオジーの思考は当たり前と言えば当たり前のことだ。
ルベリエ長官のように人を道具としか見ていない人だけじゃなく、こうして真っ直ぐな気持ちで教団に命を懸けているチャオジーも、きっとノアに対しては同じ思考を抱いている。
敵は敵。そんなの当たり前。
そんな人の気持ちを覆せるような主張もなにも私は持っていないし、きっとそんなことはできない。
大切な人達を失って、その死を原動力に変えてチャオジーは此処に立っているんだから。
「俺の言葉なんか、あんまり気にしないで下さいね」
「…ううん。チャオジーもエクソシストの一員なんだから。自分の意見をしっかり言っていいと思うよ」
焦るように言葉を付け足してくるチャオジーに笑いかける。
人は皆それぞれ、十人十色。抱く希望も感じる絶望も、人それぞれで違う。
そんなこと、わかってたのに。
…やっぱり、例えノア化してしまっても黙っているのが最善なのかもしれない。
そうやってラビの目も誤魔化すことができるなら…私にもできるかな。
変わらず此処で、生きていく為に。