My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「なーに哀愁漂わせてるんですか」
「別に哀愁なんて…あ、なんか良い男っぽく見えた?」
「いや別に」
「即答かよっ」
軽く問いかければ、軽く茶化して返される。
心の奥底まで見破ってしまいそうなラビの頭の良さは、ちょっと苦手だけど。こういう距離感は割と好き。
ラビは仕事として、私は私情込みで、きっとお互いに奥まで踏み込まないよう一歩手前でブレーキをかけてるから。
…そういえば。
ラビの隣にいれば、ふと思い出す。
深夜の教団の書庫室で、額の傷跡のことをラビはずばりノアの聖痕だと当てた。
あの時、私はこの額の傷が聖痕なんて思いもしなかった。
あれから色々資料を漁ったけど、それらしい解決法はなかった。
アレンの退魔の剣も頼れない。
でももしかしたら色んな歴史を記録してきたラビなら、何か解決策を知っているかもしれない。
「ねぇラビ。前に書庫室で…ノアの話をしたこと、覚えてる?」
「ノア? ああ、聖痕のことさ?」
「うん」
いつも程よい距離を置いてくれるラビだから、こうしてすんなり聞けたのかもしれない。
「それ以外でさ、ノアのこと何か知ってる? こう、なんていうか…弱点というか」
「ノア化を防ぐ方法を教えて」なんて率直には聞けないから、なんとなく言葉を濁して問いかけてみる。
「雪、ノアに興味でもあるんさ?」
「戦う相手の情報を知っておくのは当然でしょ?」
「そうさなぁ…オレも江戸で会ったのが初めてだから、詳しくは知んねぇけど…」
当たり障りなく言えば、やっぱりラビは特に追及することなく応えてくれた。
「あ、違った。初めて会ったのはルーマニアだったさ」
「ルーマニア?」
「おー。ティキ・ミックってノアなんだけど。列車ん中で、クロちゃんが博打のカモにされてさー」
何それ初耳。
というか。
「ティキ・ミック…?」
なんだろう。
どこかで聞いたことがあるような…。
そういえばアレンもクロス元帥の事件部屋で、似たような名を口にしていたっけ。
なんだろう。
どこか引っ掛かる、そんな名前。