My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「また夜更けにこっそり徘徊しているんですか」
「言い方。少し散歩しに出るだけだよ」
トクサとのこのやり取りは初めてじゃない。
こんな夜更けに裏口を通るのも、もう何度目になるか。
教団内では私に張り付いていないのに、一歩外に出ると途端に姿を現す。
私の監視役をきっちり務めてるんだと、ある意味感心する。
この離島自体が教団の敷地内だから、出歩いたって問題はないはず。
構わず裏口を出て進めば、止めることはなくトクサもついてきた。
視界を覆う程の大きな森の中には入らない。
其処ではユウがよく鍛錬をしていたから、こんな夜更けでも出会う可能性は高い。
衣食住に関心がないユウだから、森の中で遅くまで鍛錬をしてそのまま適当な場所で野宿、なんてこともザラだったから…気付けた時は、その度に声を掛けて部屋に連れて帰っていた。
…またそんなことしてないといいけど…。
気にはなったけど、森の横を素通りして向かう。
目的地はいつも一つ。
広大な敷地内の隅に隠れるように存在する、壮観な花畑だ。
ティエドール元帥に教えてもらった其処は穴場らしく、普段から人が少ない。
夜ともなれば当然誰もいないから、ゆっくりと一人で時間が過ごせる。
その時間がここ最近の私には必要不可欠なものだった。
誰もいない暗い花畑の前で深く息を吸う。
周りを囲う壁がないだけで、ほんの少し肩の力が抜ける。
私はエクソシストじゃないけれど、エクソシストの父を持ったからこそ思い描いていたことを実感するようになった気がする。
教団は、父を私から遠ざけ捕えていた檻。
その檻に、今は私自身が捕えられている。
ユウとの仲が深まってからは、そんなこと思わなくなっていたのに。
最近じわじわと体の内側から広がるように感じるようになった、教団への負の思い。
ユウにとっては此処が生きる場所だから、そんなこと思いたくないのに…私にとっては、此処が本当に生きるべき場所なのか。
気付けばそんなことを考えるようになっていた。
「……」
蓮の花が広がる湖畔の傍で、膝を抱いて座り込んだまま静かに時間を過ごす。
視野が広い場所だからか、トクサは離れた場所から監視してくれるから少しだけ気が楽になれる。
それでも私が真に一人になれる場所は此処にはない。
それが、息苦しいんだ。