My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「おーい。大丈夫か?」
「やっぱ元気ねぇよなぁ、雪」
「え? あ、ごめん。聞いてなかった…っ」
助言の出所を考えていたら、ひらひらと目の前で手を振られて我に反る。
そんなに元気がないように見えたのかな…バズに呆れ顔で仕事のし過ぎだと言われてしまった。
「最近、ずーっと仕事に没頭してるみたいだし」
「偶には外出て息抜きしねぇと」
「でも、当てられる仕事が内勤だから…」
「じゃあ偶には有給でも使って休めよ」
「そういや雪が有給使ったところなんて見たことなかったなぁ」
今まで、休日に特に何かしたいことがある訳でもなかったから。
そういえば一度も有給申請なんてしたことなかったな…元々忙しい職場だったってこともあるけど。
「偶には息抜きしろよ」
「そうそう」
笑って軽く背中を叩いてくれる。
皆の温かい気遣いに笑顔だけは返せた。
息抜き、か…。
確かに教団にこもるような仕事を当てられて、ここ最近は外に出ていない。
幼い時から教団で生きてきたから、今までもそんな時はあったし、だからと言って何も感じたりはしなかった。
仕事にただただ没頭してこれたのに。
今は、この賑やかな食堂も、一人用の見慣れた部屋も、内勤の職場も。
何処にいても、なんだか──…息苦しい。
夜。
昼間より人気の少ない通路を、ひたひたと一人歩く。
教団の裏口に繋がる道だから、余計に人は少なく出会い頭に止められることもない。
そうして無事建物の外に一歩出られただけで、ほっと張っていた肩の力が抜けた。
「こんな夜更けに何処へ?」
「っひゃ!?」
そんな自由も束の間。
気配もなく真後ろから声を掛けられて、思わず体がビクついた。
振り返れば其処には、いつもの真っ赤な緋装束ではなくアジア風のラフな服装のトクサがいた。
「なんですか、その間抜けな叫び声は。もっとマシな声出ないんですか?」
「…なんでいちいち叫び声の駄目出しされなきゃならないの…」
というかなんで此処にいるの。
いきなり真後ろに立たないで、怖いから。