My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
ユウとの未来ばかりを見ていた頃は、こんな息苦しさはなかった。
辛いこともあったけど、ユウとの為ならって踏ん張れた。
自分の為じゃなく、誰かの為に。
そんなふうに他人を思えたのは初めてだったから、驚きもあったけど強くなれた。
でも…それは同時に人を弱くもさせるんだと知った。
昔は、自分の為だけに立ち続けていられたのに。
今では、自分の為だけに立つことが難しい。
「…だめだなぁ…」
思わず泣き言を零して、抱いた膝に顔を埋めてしまう。
こんな状況が続くことが良いことだとは思っていない。
でもどうしたらいいのか、ユウの懐に飛び込むだけの勇気が湧かない。
元々口下手で無口なユウは、自分のことをあまり話そうとしない。
それでも歩み寄ろうとした私に、多少は応えてくれるようになった。
アルマのことを伝えてきてくれた時は、凄く嬉しかった。
嬉しくて、同時に愛おしさも生まれて。
この人が抱えているものを一緒に守りたいって思えた。
それでも、私が知っているのはきっとユウの素性の断片だ。
その中の一つに、ユウの部屋に置いてある透明なガラスのオブジェがある。
机の上に素っ気無く置かれた、砂時計のような形をしたそれの中には何も入っていない。
なのに時折じっと中のものを見つめるかのように、視線を向けるユウの横顔を見てきた。
私が眠りについている時とか、気付かれない時にこっそり見つけることが多い横顔だったから…多分、ユウも無闇に触れて欲しくないことなんだろうなって、知らないフリをしていた。
前に一度だけ何気なく聞いたことはあるけど。
殺風景な部屋が常のユウだから、飾り物を置くなんて珍しいなって、そんな単純な思いから。
『それ、何かの飾り?』
『…別に』
些細な会話だったと思う。
普段から多くを語らないユウだから、その時はああそうか、なんて軽い気持ちで受け流していたけど。
でも意味深に見つめる横顔を見つけてからは、頭の隅に微かに引っ掛かっていた。
それでもそれ以上踏み込めなかったのは、ユウへの気遣いが半分と…きっと自分の弱さも半分。
ユウの為に強くなれる自分がいるのに、ユウのことだから弱くなってしまう自分もいるんだと知った。
…これってやっぱり、ユウの為だけに生きていることになるのかな…。