My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
主が黒の教団でどのような扱いを受け、どのような目を向けられているか知っている。
恐らくノアの中で、現在最も御主を理解できるのはワタシだ。
じゃからワタシの前では強がるな。
「ほうら、力を抜け。案ずることはない」
「…っ」
「出せるものは出せ。ワタシが受け止めようのう」
「……ばか……」
震える小さな声が、心を零す。
「…ユウの、ばか…っ肝心な時に話さないのは、そっちも同じじゃない…ッ」
「うむ。そうだのう」
「好きだから、そうなること、なんで気付いてくれないの…っ」
「うむ。うむ」
「私だって、自分の体のこと、とか、周りのこと、とか、で、いっぱいいっぱい、だったの、に…ッ」
小さな嘆きが大きくなる。
涙声を震わせて、泣きじゃくる雪の体を殊更抱きしめた。
「よしよし。そ奴は阿呆だのう。こんなに可愛い御主を泣かせるなど」
「ぅ…く…っ」
「声を殺さずともよい。涙は心の洗濯だ、心を綺麗にする為のな」
「ふ…っ」
ぽろりぽろりと落ちてくる涙の雫を、優しく拭い取ってやる。
そうだ、洗い流してしまえ。
神田ユウへの想いごと、全部のう。
「雪の涙は綺麗だのう。主の心のように澄み切っておる」
「ぅ…褒めて、も…何も出ない、よ…」
「此処で雪の心に触れられていることが、ワタシには褒美のようなものだ」
神田ユウではなく、ワタシにその弱さを曝け出してくれていることが、何より大事なのだから。
にっこり笑ってやれば、赤くなった鼻を啜りながら雪の涙ぐんだ目が瞬く。
それから、不意に目元が柔らかく緩んだ。
「……変、なの…」
「そうか?」
「うん……でも、可笑しくないよ…」
「…そうか」
雪の体の力が抜けるのを感じた。
ワタシの腕の中に身を預けてくるその存在を、優しく受け止める。
「…ありがと、ワイズリー」
消え入りそうな声で伝えられた感謝の意に、思わず口元が綻んでしまう。
「どう致しましてだのう」
今この場に生まれた穏やかで暖かな空気は、全てワタシへと向いている。
雪が今求めているものは、他ならぬこのワタシだ。