My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「ユキは真面目過ぎるところがあるよな」
「偶には気楽に生きないと、息が詰まるぞ」
「そんな簡単に生きられる立場じゃ───」
言葉にすれば簡単だが、実行するにはあらゆる障害が付き纏う。
思わずむっと反論しかけて、雪は続けられない言葉に口を閉じた。
ノアの事情を二人に話したところで、関係のないことだ。
しかし二人は違ったらしい。
皆まで聞かずとも、納得した顔で互いを見る。
「どうやら僕達の目は、最初から間違ってなかったみたいだ」
「この組織の中で、ユキだけが周りと違って見えていたこと」
「………」
否定はできなかった。
どんなにアレン達に仲間だと認められようとも、現実がそれを否定する。
部外者の面会一つ、満足にさせて貰えない自分は明らかに教団の中で異端者だ。
「少しなら聞いたよ、僕らも。君達の組織と、君自身のこと。校長とマクゴナガル先生は知ってたみたいだけど」
「まさかその体に、あんなに大きな力が眠ってるなんてね。魔法使いも吃驚さ」
「……何も、思わないの?」
「何が?」
「危ないとか…怖いとか。私も自分でコントロールできない力だから…」
見境なく仲間でも傷付けてしまう。
そんな自分は、一種の爆弾だ。
恐る恐る問い掛ける雪に、双子は顔を見合わせるとまたもあっけらかんと首を傾げた。
「なんで?」
「なんでって」
「魔法だって扱い方を一歩間違えれば、自分に跳ね返ってくる」
「そんな力を怖がってたら、魔法使いなんてやってられないさ」
「それは…」
それも否定はできなかった。
杖をひと振りするだけで他人の命をも奪える力なのだ。
脅威でないはずがない。
「……なんでだろ」
そう改めて魔法界の力を現実のものとして受け入れると、素朴な疑問が浮かんだ。
「何がだい?」
「魔法だって、他人に恐怖を与える力になるのに。なんで、こんなに魅力的に見えるんだろう」