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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



「おおっと、邪魔が入った」

「行くぞユキ!」

「わぁっ!?」



いち早く動いたのはフレッドとジョージだった。
握った雪の手を強く引くフレッドに、窓の外へと引き摺り出された雪の体をジョージが受け止める。



「っ何処行くんさ!?」



ワンテンポ遅れて我に返ったラビが窓辺に駆け寄れば、既に雪の体は離れ空へと舞い上がっていた。



「雪!」

「少し借りるだけだから!」

「戻ってくるから捜さないでくれよ!」



高らかに告げ去る双子に、窓枠に足を掛け鉄槌を取り出していたラビは動きを止めた。
ジョージの背中にしがみ付く形で箒に乗った雪の目が、小さくなりつつあるラビを捉える。

交わす言葉はなかった。
しかし雪のその表情を見て、ラビは上げていた手も足も下ろした。
雪との出会いは二年と少し。
だがその間にそれなりには信密度を重ねた。



「(そんな顔すんなさ…)追えねぇじゃんか…」



罪悪感の混じった瞳で、しかし双子に抗わない体は束の間の自由を望んだのだろう。

ブックマン一族だからこそ、ここ数日の雪の身に起こったことは情報としてラビも得ていた。
その雁字搦めの情報が、雪を縛り付けていたことも。
一時でも気晴らしができるのであれば、多少の粗相など目を瞑ろう。
肩を落として溜息をつくと、ラビは壁にかけられた時計に目を向けた。

果たしてトクサをやり過ごす時間は、どれ程残っているだろうか。






























「間一髪だったな」

「追い掛けて来ないし、大丈夫そうだ」

「………」

「どうした?ユキ」



ふわふわと空を舞う二本の箒。
ジョージの背に大人しく掴まった雪は逃げる素振りを見せていないが、眉を下げ出てきた病棟を見下ろしていた。



「迷惑かけたかな…」

「迷惑って、何が?」

「何がって。勝手に病室飛び出したりして」

「日暮れ前には帰るし、問題ないだろ?」

「別に此処から逃げ出した訳じゃないんだし」



そんな雪の心配を余所に、双子はあっけらかんとしたもの。
寧ろ不思議そうに雪を見て首を傾げた。

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