My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「二人は何処にいても変わらないね」
出会った当初からそうだった。
マグルの世界でも、魔法の世界でも、AKUMAの巣窟のようなリッチモンド邸でも、エクソシストとノアが対峙した場でも、此処黒の教団でも。
どこまでも素の等身大な二人に、そして雪への態度もまるで変わらない二人に、安心感のようなものを覚えた。
自分の立場を理解はしていても、腫れ物のように扱われるのはいい加減うんざりしていたからだ。
「ユキの方こそ」
「やっぱりその笑顔はチャーミングだ」
にっこりと人懐っこく笑う、瓜二つのそばかす顔。
舞踏会ではそこまで響かなかったはずの褒め言葉に、若干の照れ臭さを覚える。
「褒めても何も出ないよ」
「本当のことを言ったまでさ。なぁ兄弟?」
「勿論だとも。そこで提案なんだが、チャーミングユキ」
「何そのふざけた呼び方。絶対褒めてないよね」
「じゃあポッタリアンユキ」
「だから絶対ふざけてるよね」
それも束の間、何処までも変わらない双子に雪の笑顔にも冷たさが宿る。
お調子者なのは悪いことではないが、聊か彼らは度を過ぎることがある。
「そう尖るな尖るな。折角探検の誘いに来たのに」
「…この状況見て誘いにきたわけ?」
「怪我はダンブルドア校長が治したんだ。動けない訳じゃないだろ?」
「それはそうだけど…」
「二人だけで探検するのも悪くないけど、やっぱり此処を知ってる者がいた方がより楽しめるし。どうだい、友よ」
他人同盟を組んだ時のように、差し出される二つの手。
明るい太陽を背に誘う、太陽のような笑顔を浮かべた二つの顔。
「会議の間だけさ」
「息抜きだと思って」
一瞬躊躇はしたが、魔法のように言いようのない魅力を感じる。
ゆっくりと二人の手を雪が握った時、コンコンと再びノック音がした。
今度は鴉の札が貼られたドアから。
「雪、起きてる───さ?」
顔を覗かせたのは、ラフな私服に身を包んだラビだった。
ドアを開けた姿でぽかんと固まる彼に、同じくぎくりと固まる雪。